AWS、福島銀行のクラウド勘定系システムの稼働状況を発表
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下AWS)は10月23日、福島銀行がSBI地方創生バンキングシステムやフューチャーアーキテクトと構築し、7月にAWS上で本番稼働を開始したクラウド勘定系システムについて、その経緯や現状などを発表した。 福島銀行のクラウド勘定系システムは、SBIホールディングス傘下のSBI地方創生バンキングシステムとフューチャーアーキテクトが共同開発する「地域金融機関向けのクラウドベースの勘定系システム」をベースにしており、AWSを稼働環境に採用した国内初の事例となる。 AWSは、10月23日時点で、7月の本番稼働開始から3カ月を超えて安定稼働を継続していると発表。同社は、「計画段階からAWSの伴走支援により、高い拡張性と柔軟性を備えたクラウドネイティブなアーキテクチャーで設計され、わずか3年という短期間で全面稼働を開始した。AWS アジアパシフィック東京リージョンおよび大阪リージョンのマルチリージョン(東阪リージョン)を活用して、高いレジリエンシーを実現したものとなる」とアピールする。 このシステムでは、AWSのコンテナーアプリケーション運用管理サービス「Amazon Elastic Kubernetes Service」(Amazon EKS)を利用し、さまざまな業務機能をマイクロサービス化して拡張性や連携の容易さを実現したとのこと。クラウド移行やピーク時対応など重要なシステムイベントのAWSのサポートサービス「AWS Countdown」も福島銀行に採用されたという。AWSの専門家が実証済みプレイブックを使ってプロジェクトの進ちょく全体を管理し、福島銀行ではクラウド運用準備状況を評価し、リスクを軽減しながら効率的に勘定系システムをAWSへ移行して、安定稼働させているという。 また、このシステムでは「AWS金融リファレンスアーキテクチャ日本版」を適用し、東阪リージョンを使ったアクティブ-スタンバイ構成で設計された。ここでは単一の「Amazon Aurora」のデータベースを複数のAWSリージョンでまたがって運用できる「Amazon Aurora Global Database」機能を利用している。 事業継続や災害復旧などの観点では、このシステムでのバックアップデータの目標復旧時点(RPO)を計画切り替えで0秒、災害時など予期せぬ切り替えでも通常1秒以内を実現しているとのことだ。災害対策では、ソフトウェアやアプリケーション、インフラストラクチャー、ネットワークの潜在的なシステム障害や弱点を事前に特定して緩和するためのテスト手法「AWS Fault Injection Service」を利用し、東阪リージョンおよびマルチアベイラビリティゾーン(AZ)における障害をシミュレーションした。耐障害性検証では、ノード障害とAZ障害を通常障害の範囲として定義し、1分で自動回復可能なことを確認した。リージョン障害については「最終防衛ライン(満たすべき耐性度)」として定義し、これも1時間で切り替えが可能であることを確認しているという。 さらに福島銀行は、AWSが重要なワークロードへのプロアクティブ対応とインシデント管理を行うサービス「AWS Incident Detection and Response」も導入している。同サービスは、24時間体制で対象を監視し、インシデント検知時には5分以内に顧客と電話会議を開始して、障害の早期復旧を支援するという。 このほかに福島銀行は、オンライン口座開設時の本人確認でSBIグループの本人確認済みID発行サービス「Trust Idiom」を導入している。Trust Idiomでは、2025年6月までにeKYCにおける審査負荷軽減のための個人識別用情報の画像マスキング機能などが実装される予定で、これにはAWSの生成AI基盤「Amazon Bedrock」が使われるという。