店頭展示用の空気清浄機を無償で提供 ── 都内の家電ベンチャー
世界的に企業の社会的責任(CSR)意識が高まる中、日本でもユニークなCSR活動が始まっている。家電ベンチャーで、空気清浄機を中心に製造している家電ベンチャーcado(カドー、東京・港区)は、同社のCSRの一環として、きれいな空気を届ける活動を行っている。 カドーは、世界トップ水準の清浄能力を持つ空気清浄機などを製造・販売する2011年6月設立の新興家電メーカー。大手電機メーカー出身の社長、デザイン家電メーカー出身の副社長が中心となって経営し、高い性能とスタイリッシュなデザインで、芸能人など愛用者も多い。 同社が始めたCSR活動は名付けて「空気をきれいにチャリティ」。きれいな空気が必要な人々に自社製品の空気清浄機を無償提供する活動だ。 家電メーカーの多くは、量販店などに店頭展示用のサンプル製品を出しているが、商品の切り替え時など一定期間が経過したタイミングでこれらを回収する必要がある。その結果、展示のみ、あるいはごく短時間しか実際に動かしていない製品が大量に戻ってくることになる。このため、クリーニングし、動作確認のうえで、空気に困っている人々を支援すするために、ニーズのあるところに寄贈しようと発案した。 同社では、ホームページで募集を始め、第一弾として川崎市の小児科クリニックに提供した。さらに、7月中にも埼玉の県立高校に提供するという。
総合技術高校である同校は、作品製作の際に出る化学物質などの影響でマスクをして活動する学生も多く、きれいな空気を維持することに腐心しているという。カドー社は、寄贈先に病院やクリニック、老人福祉施設、動物病院などを想定しており、今年度は50台の寄贈を検討しているという。 鈴木健・副社長は「私たちは、自分たちできちんと持って行き、使っていただき、そしてその様子を取材させて頂いています。わたしたちの目指すチャリティの意味を理解していただくため、そのようなパッケージで活動しています」と話す。寄贈先については自薦、他薦は問わないという。 今、こうしたユニークなCSR活動を展開する企業はカドーに限らない。小学生に理科を学ぶ魅力を身近に感じてもらおうと、各地の小学校で出前授業を展開している製薬会社が有るほか、海外では、アパートのバルコニーで無料で自由に飲めるコーヒーを提供することで、それまでつきあいのなかった近隣の人たちを結びつけて近所づきあいを促そうとする食品総合メーカーなどもある。 現代は、製品の見た目や性能、味だけで消費者の心が動く時代ではない。企業が社会に積極的に貢献し、ブランドイメージを上げることで、消費者を味方につけ、選ばれるようになっている部分も大きい。日本のみならず、世界でさまざまな企業が社会貢献活動に取り組んでいるが、その企業を応援したいと消費者に思わせ、実際に選んでもらうための具体性と説得力のあるストーリーが重要な時代になっている。 (3Nアソシエイツ)