終焉の家で「一村忌」 孤高の画家の功績たたえる 奄美市名瀬
晩年を鹿児島県奄美大島で過ごした孤高の日本画家・田中一村(1908~77)の命日を前に8日、奄美市名瀬の一村終焉(しゅうえん)の家で「一村忌」が行われた。地元有志ら約20人が参加し、一村の功績をたたえて祭壇にソテツの葉をささげ、冥福を祈った。 一村を顕彰するため、有志で組織する一村会(美佐恒七会長)が主催し、今回で36回目。昨年から児童生徒が参加する「一村キッズクラブ」(県奄美パーク・田中一村記念美術館)の活動日に合わせて命日に当たる11日の前に開催している。 参加者は午前8時半から約1時間半かけて家屋周辺を清掃した。室内には一村の写真を飾り、お菓子やバナナなどを供えた祭壇を設置。ゴンズイやハイビスカス、ビロウ、一村がモチーフとして描いたクロトンなども花瓶に生けられた。主催者があいさつした後、参加者は祭壇に手を合わせて一村をしのんだ。 会では田中一村記念美術館から、今月19日から東京都美術館で開かれる「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」の説明もあった。同館の上原直哉学芸専門員は「奄美が一村を一村にした。遠方だが、ぜひ足を運んで」と話した。 岐阜県から夫・誠一さん(74)と参加した杉山エイ子さん(同)は「(一村は)奄美を盛り立ててくれた存在。早くに亡くなられて惜しかった。子どもたちにも功績を受け継いでいってほしい」と願った。 一村忌の後、参加者は祭壇の前でお菓子を囲み、在りし日の一村に思いをはせながらだんらん。キッズクラブの児童は「一村さんみたいに繊細できれいな風景画を描きたい」と意気込んだ。 美佐会長(76)は「今後、さらに地元へ向けての一村の功績の普及活動に力を入れたい」と語った。