無名だったミルクボーイ推して大当たり…劇場で才能見抜いたプロデューサー「今年のM―1で決勝に行く」と猛プッシュ
関西を拠点に活躍する吉本興業の人気漫才コンビ「ミルクボーイ」。若手漫才師の日本一を決める賞レース「M―1グランプリ2019」で優勝し、芸人生活を一変させたドラマは、今も語りぐさだ。その資質を早くから見抜いていたのが、ABCラジオのプロデューサー、 上ノ薗(うえのその)公秀(56)だ。 【一目でわかる図表】芸人を起用した主なラジオ番組
「ミルクボーイの煩悩の塊」は、内海崇(39)と駒場孝(38)が日常のあれこれを話し、リスナーからの投稿を紹介する深夜ラジオ番組。開始からまもなく5年になる。「こんなに長いこと同じプロデューサーと仕事するなんてないですね」と内海。打ち合わせでは、上ノ薗が「あれ聞いた?」と、お笑い界のゴシップをネタに、場を和ませる。
自身も大学時代に芸人を志したことがあるが、才能に見切りをつけ裏方に回った。今も、月10本以上のインディーズライブに足を運ぶ「お笑いオタク」だ。
ミルクボーイと出会ったのは2010年。番組制作会社やフリーランスでラジオのお笑い番組を作ってきた実績を買われて朝日放送グループの子会社に入社した翌年だ。「ABCお笑い新人グランプリ」の予選会で初めて見て、その面白さにはまった。
しかし、その後、上ノ薗は朝の情報番組担当に替わり、ミルクボーイも漫才から一時、距離を置いた。両者の接点はなくなった。
上ノ薗が再びミルクボーイのとりこになったのは、19年7月。大阪・なんばグランド花月で行われたお笑いイベントで「もなか」を見てからだ。「駒場の母親の好きなお菓子は何か」という単純な問いを巡って2人が延々、やりとりをする漫才に、「笑いすぎて椅子からずり落ちた」。
火が付いたように「ミルクボーイは今年のM―1で決勝に行く」と局内で言って回り、番組で起用するよう働きかけた。
ある日、局内のラジオプロデューサーから、駒場単独で出演依頼をしたいという相談があった。「どうせやるなら、2人とも出してあげてよ」とプッシュした。放送日の12月21日は、ミルクボーイの命運がかかるM―1の決勝前日だった。「心の中ではもう、一緒に戦っている感覚だった」と振り返る。