【コラム】短期戦闘では米国が勝っても長期戦争は中国が勝利か(2)
また、第三国を通じた迂回輸出や米国内に直接工場を作って物を売る方法もある。トランプ氏は高率関税が嫌なら法人税が低く規制が少ない米国で米国人を雇用して生産しろと話す。これに対して中国国際化センターの王輝耀理事長は中国にはバッテリーメーカーCATLを含め対米直接投資を望む企業が少なくないと話す。すなわち直線ではなく曲線へ進む「曲線救国」政策を施行できるということだ。 技術覇権戦争も苦しいが方法がないわけではない。中国も反撃できる。半導体製造に広く使われる金属のゲルマニウムとガリウムに対する中国の輸出制限措置がひとつの方法だ。また、中国企業はすでに独自開発や迂回貿易などを通じて先端半導体を含む米国の技術統制に穴をあけている。中国の巨大内需市場と政府の莫大な補助金などに力づけられ世界的競争力を備えていく中国企業も増加している。 ◇関税爆弾、インフレ呼び米国にも苦痛 台湾問題でも中国の位置は悪くない。北京の立場では戦争を起こさずとも非軍事的手段を使って効果的に台湾を統制できるならばあえてリスクの高い軍事手段に依存する必要はない。そしてあるいは中国経済が厳しくなり行き詰まった場合、習近平政権の立場では台湾問題解決に積極的に乗り出し中国国民の視線をそらすことができる。 第2次トランプ政権が中国に短期的には試練かもしれないが長期的には祝福になるかもしれないという見方は少なくない。シンガポール国立政治大学の庄嘉潁教授によると、気まぐれでつかみどころのないトランプ氏のスタイルは10年または15年の長期投資には良くない。短期的には差が大きくないかもしれないが長期的には米国の経済力を損ねる公算が大きい。結局長期レースで中国が優位に立つことができると分析される。中国清華大学国際関係研究院の閻学通院長は「トランプ氏は米国の国際的支配力より米国内の利益に関心が大きい」と指摘する。米国が抜けたことで生じる新たな権力真空状態で中国が影響力を拡大できる良い機会という話だ。第2次トランプ政権序盤に米国は関税爆弾など猛攻を通じてある程度戦果を上げるものとみられる。しかし同盟もはばからない米国優先主義が持続する場合、米国の国際的地位は低下するのが明らかだ。この場合米国は中国との短期戦闘では勝っても長期戦争では負けることもできることを警戒しなければならない。 韓国の一部ではトランプ氏が中国とのデカップリングを公約に掲げたため中国を除いた自由民主陣営で韓国が製造業覇権を握ることができる好機を迎えたという主張をしたりもする。また、米中の間で生半可に二股をかけてはならないともする。もう米国の背中に乗る時だと話す。しかし米中関係がそのようにダイコンを切るように一刀のもとにデカップリングできるだろうか。極めて懐疑的だ。トランプ氏の関税爆弾は中国に衝撃でもあるが別の一方では米国企業の輸入コスト増加を呼び、結局その被害は米国の消費者に転嫁され物価上昇をあおると予想される。対中追加関税は中国に苦痛も与えるが、米国にインフレを引き起こす両刃の剣でもある。 現代世界はインターネットのように連結の時代だ。トランプ氏はあらゆるものを利益に基づいて取引しようとする。中国とのデカップリングうんぬんも中国を圧迫してより多くの利益を取ろうとする高度な計算から出ている可能性が大きい。トランプ氏は貿易談判で終始開放的な態度を維持する。また、技術競争など敏感な問題でも妥協の意思を明らかにしている。韓国はトランプ氏が「関税マン(tariff man)」だが「交渉解決者(deal maker)である点を決して忘れてはいけない。 トランプ氏は中国が問題ではなく中国の扱いを間違えた人たちが問題だと話す。韓国が米中の間でどのように対応すべきかと関連して多くのことを考えさせる警句に聞こえる。 ユ・サンチョル/中国研究所長