大規模停電が起きたら? 異常事態を生き抜く家族の姿 │映画「サバイバル ファミリー」
先月、大阪市で最大24万戸あまりに上る大規模停電があった。 8月15日午前4時過ぎに発生し、点灯しない信号機の代わりに警察官が手信号で対応したり、JR他の鉄道が運転を見合わせたりする事態となった。幸い午前9時までにすべて復旧したが、酷暑の折の停電は、健康被害や最悪の場合死に繋がるだろう。19日には、落雷の影響で関東地方で一時的に広範囲の停電が起きた。地震や洪水などの災害があまりに身近になってしまった日本では、いつ長期の停電が起こっても不思議ではない。 そんな「突然の大規模停電がいつまで経っても復旧しなかったら、私たちの生活はどうなるのか?」という恐怖の設定を、ある家族の姿を通しコメディを交えて描いたのが、『サバイバルファミリー』(矢口史靖監督、2017)である。 ■「異常事態」を生き抜く家族 鈴木義之(小日向文世)は東京のサラリーマン。妻、光恵(深津絵里)は専業主婦で、大学生の息子、賢司(泉澤祐希)と高校生の娘、結衣(葵わかな)の4人家族、マンション暮らしだ。 ある朝から始まった停電はなかなか復旧しないばかりか、あらゆる電池も機能せず、それらの影響でライフラインがすべて止まってしまう。エンジンがかからず、あちこちで立ち往生する車。ダウンして復活しないサーバー。原因不明のままいっさいの情報が遮断された中、深刻な影響がじわじわと広がっていくさまが描かれる。 一週間目、急速に荒れ果てていく東京を一家は自転車で脱出。「大阪方面は停電していない」という真偽不明の噂を頼りに、ひたすら西を目指して移動を始めるが、その先には想像を絶するいくつもの困難が待ち構えていた‥‥というストーリーだ。 本作ではまず、停電という「異常」が起きても、すぐさま日常の行動を変えられない人々の姿が描かれる。運休中のアナウンスをよそに、来ない電車を待ち続けるホームには溢れんばかりの人々。義之は2駅歩いて会社に行き、ほかの社員たちとともに開かない入り口の自動ドアのガラスを破壊して中に入る。だが電子機器は使えず仕事にならない。