中高生に超低用量ピルのススメ…毎月の生理が子宮内膜症や卵巣がんのリスクを上げる
月経(生理)は毎月来るのが当たり前&健康の証し、と思っていないか? 「現代女性は月経の回数が多すぎます」 低用量ピルが「生理痛」や「子宮内膜症」に効くのはなぜ? こう言うのは、「藤沢女性のクリニックもんま」(神奈川県)の門間美佳院長だ。 昔の女性は初潮を迎えるのが今より遅く、出産回数5~6回というのも珍しくなかった。妊娠中は月経がなく、授乳中も月経はほぼないので、生涯で月経のない期間が結構まとまってあった。 一方、現代女性の平均初潮年齢は12歳前半で、出産回数が少ない。 「昔の女性の月経回数は生涯で約50回といわれているのに対し、現代女性の妊娠出産を2回程度とした場合で、生涯月経回数450回。9倍もの差があるのです」(門間院長=以下同) 月経の増加は、多くの女性にとって体への負担増となる。 まず、月経痛、PMS(月経前症候群)、月経困難症といった月経にまつわる不調。QOL(生活の質)が下がり、生活や仕事に支障をきたす人も少なくない。 次に、月経は病気のリスクを上げる。 「月経痛がある若年女性の7割に微小な子宮内膜症があるとの指摘があり、子宮内膜症は将来の妊娠時のトラブル、不妊症、子宮内膜がん、卵巣がん、骨粗しょう症のリスクを上げることもわかっています。さらに、心筋梗塞など心血管系疾患の発症リスクを上げるという報告もあります」 女性の体の中では初潮後、毎月、妊娠の準備が行われる。排卵後、“受精卵のためのベッド”として子宮内膜ができ、妊娠が成立しなければ血液と一緒に子宮外に排出される。これが月経だ。 「月経は妊娠のためには必要ですが、妊娠を希望しない時期は、必要ないとも言える。むしろ排卵を抑えたり、月経回数を減らすことで、PMSや月経困難症などの不調から解放され、将来の妊娠をより良くし、がんや心血管系疾患を予防することに役立ちます」 月経をコントロールするのに有効なのが、ホルモン剤だ。そのひとつがピルになる。ピルの知識に乏しい人は「血栓症のリスクを上げる」「避妊目的」という思い込みがあるかもしれない。 「親がこれらの思い込みから『ウチの子にピルなんて!』と頑なに拒否するケースが多い。月経痛がひどく保健の先生から勧められてピルを飲み始めた中高生が『親に取り上げられた』と泣いて訴えるケースもあります」 今のピルの正しい知識は次の通りだ。 ■安全な超低用量ピルが登場している ピルには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類のホルモンが含まれている。 「エストロゲンは長期間、または大量の使用で血栓症のリスクを上げますが、開発が進み、エストロゲン量が少ない低用量ピル、さらにもっと少ない超低用量ピルが登場。保険適用で使える超低用量ピルは、中高生にも勧めています」 ■エストロゲンを含まない薬も登場している 超低用量ピルは少ないとはいえエストロゲンが含まれているが、「黄体ホルモンのみの薬も月経困難症、子宮内膜症に対し承認されています」。 ■避妊目的ではない 低用量ピル、超低用量ピルは、「経口避妊薬」または「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」と言われ、成分は同じだが、前者は自費。「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」は避妊の適応はなく、月経困難症や子宮内膜症などの治療目的の場合、保険適用となる。 ■薬をやめたら妊娠できるようになる ピルを飲んでいる間は排卵や月経が抑えられているが、やめたら妊娠可能となる。 なお記者は20年間低用量ピルを服用していたが、思春期以降絶え間なくでき、悩みの種だったニキビが服用1カ月できれいに消えて感激した。 月経痛は一度もなく、月経のタイミングがはっきりと分かるので備えられ、常々「ピルを飲まない手はない」と感じていた。念のため定期的に血液検査を受けていたが、異常を指摘されたことはない。 少なくとも月経関連の悩みがある人は、ピルを検討しては? 中高生なら、親や保健の先生などに相談を。そして娘を持つ親のみなさん、間違った思い込みを押し付けないように!