初回から号泣必至…NHKドラマ『宙わたる教室』が他の学園ものと一線を画すワケ。第1話考察レビュー
小林虎之介の真摯な芝居
その後、藤竹は岳人のかねてからの疑問だった「空はどうして青いのか?」を説明する実験を行う。教室につくられたささやかな青空を鼻で笑うが、岳人が興味を示しているのは明らかだった。 たしかに、なくしたものを取り戻すことは難しい。岳人が10代の頃に過ごせていただろう学生生活は、もう戻ってこない。だけど、知りたかったことを学び直すチャンスはまだある。 こぼれ落ちそうになっている生徒たちを、精神的にサポートしてすくい上げていく学園ものが多いなかで、『宙わたる教室』は一線を画しているように感じた。藤竹は、精神論を語らない。ただ、ここには学びたいと思う者が学べる場所があり、教師はそこで彼らを待っているのだと諭す。諦めたものを取り戻せるかどうかは、生徒自身の意志に委ねられている。 主演を務める窪田ももちろんだが、岳人を演じる小林虎之介の、やや粗削りではあるが、だからこそ真摯さが伝わってくる芝居が印象的だった。同僚からひらがなだらけの文字を馬鹿にされたときの怒りと、ディスレクシアである可能性を伝えられたときの怒りが、まったく違う表現をしているようにも感じた。 実年齢は26歳とのことだが、それよりもっとあどけなくも見えるのは、作中で彼が岳人として生きているからこそ。ひたむきで繊細な小林がつくる今後の岳人にも注目したい。 【著者プロフィール:あまのさき】 アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
あまのさき