初回から号泣必至…NHKドラマ『宙わたる教室』が他の学園ものと一線を画すワケ。第1話考察レビュー
岳人の涙の意味
岳人は、この話を聞いて涙を流した。最初は自分が怠けていたわけでも努力が足りなかったわけでもないことに安堵した涙なのかと思った。 だが、違った。岳人は悔しがっていた。なんでいままで誰も気づいてくれなかったのか。原因がわかっていたら、もっと対処できていたかもしれない。 親から「努力が足りない」と言われることも、「不良品だ」と捨てられたおもちゃに自分を重ねることもなく、横目で眺めていたグループで歩く大学生たちのような生活を、自分だって送れていたかもしれないのだ。 病名がつくと安心する、という話を聞いたことがあるが、そうとは限らないのだということに気付かされる。これまで犠牲にしてきてしまったものがあまりにも大きすぎて、安堵になんて全然至っていない。 岳人はなくしたものは取り戻せない、知らないままのほうがよかった、とふさぎ込み、いよいよ学校に来なくなってしまう。でも、果たして本当にそうなのだろうか? 藤竹はしつこいくらいに岳人に電話をし、授業に来るように促す。まるで、岳人の本当の気持ちを見透かしているかのように。 自分を麻薬の売人に誘う孔太(仲野温)がしびれを切らし、「学校に行くから」と留守電を残しているのを聞いた岳人は、しぶしぶ登校。すると、校庭をバイクで走り回り、ちょっとした騒ぎを起こしていた孔太の前に、藤竹が立ちはだかっていた。 授業ができないから帰ってくれ、という藤竹に対し、すでに退学済の孔太は時間の無駄だと岳人を説得しようとする。藤竹は、「無駄にするかどうかは自分次第」「ここは諦めたものを取り戻す場所」と話す。この言葉が、岳人の心に届く。 もともと、知識欲は旺盛だった岳人。だが、文字の読み書きが困難だったことで、自らその道を閉ざしてしまった。いまからでも、失ったものが取り戻せるかもしれない――これが、岳人にとってどれほどの希望になったことだろう。