「携帯ショップの王者」買収が映す通信業界の苦境 ティーガイアはなぜファンド傘下入りの道を選んだ?
ショップ運営においては、アクセサリーなどの独自商材の併売や、荷物預かり場所としての利活用を進めるなど新たな知恵を出してきたが、成長戦略として決定打に欠けるように見え、手詰まり感も漂っていた。「初期から業界に参入し、右肩上がりで成長していた会社である分、意識を切り替えられないまま、成熟市場への対応が遅れた」(ティーガイア関係者)。 ■買い手候補にノジマが取り沙汰されたが… 苦境が続く中、TOB発表前から業界内ではティーガイアの買収が噂されてきた。買い手候補として一時取り沙汰されたのが、ノジマだ。
ノジマの本業は家電量販店だが、コネクシオをはじめとする携帯販売代理店を次々と買収し、今では代理店業界2位の地位を築いている。さらなるM&Aにも意欲を示し、コネクシオ買収時に野島廣司社長は東洋経済の取材に、「携帯ショップは成熟市場だが、成熟市場で伸ばせるノウハウがあるから、買収した。この厳しい業界の中で生き残れる会社は当社だけではないかと思っている」と自信をのぞかせていた。 しかしふたを開けてみると、ティーガイアが売り先に選んだのは事業会社ではなく、PEファンドだった。
通信業界に詳しいMM総研の横田英明副所長は「ノジマもティーガイアを欲しがっていたと思うが、(取引先の)キャリア側が、特定の代理店に店舗運営が集中するのを嫌がったのではないか」と分析する。ショップ運営の大部分を特定の代理店が担うことになれば、キャリアにとって交渉力低下が懸念されるというわけだ。結果として、ノジマ主導の巨大再編が実現されることはなかった。 ファンド傘下で再成長を目指す見通しとなったティーガイア。非公開化後にどのような戦略を描くのか。
TOBに関するリリースによれば、上場廃止後もベインは現状の経営体制を原則維持し、現経営陣が引き続きグループ運営を主導する想定で、「モバイル事業の収益力向上、法人営業の強化、追加M&Aによる成長の加速、成長実現に向けた実行力強化等」を進めるとしている。 すかいらーくといった小売業界の支援実績もあるベインは、過去の知見を生かして店舗運営効率化を進めるもようだ。一方で「従業員の処遇に変更はなく、全国各地で展開するキャリアショップ事業も変わらず存続する想定」とし、人員や店舗削減には慎重な姿勢をにじませた。すでに追加のM&Aを示唆しており、残存者利益の獲得を視野に入れているようにも見える。