「携帯ショップの王者」買収が映す通信業界の苦境 ティーガイアはなぜファンド傘下入りの道を選んだ?
■さらなる合従連衡が進む可能性 投資ファンドであるベインにとっては、「エグジット」(出口)が将来的に必ず求められる。ティーガイアのような規模の上場企業の場合、PEファンドは対象企業を買収後、企業価値を向上させたうえで再上場させて利益を確定するのが王道だ。 しかし、すでに成熟期を迎えているこの業界で現状のビジネスモデルを維持する限り、中長期的な成長路線は見込みづらい。このため、「再上場は難しく、結局、最後はノジマのような代理店に売り渡す道しかないのではないか」(ある代理店幹部)といった見方もくすぶる。過去には、代理店大手のITXを国内ファンドが2012年に取得後、2015年にノジマ傘下に入る道をたどったケースもあった。
もっとも複数の関係者によると、ベインは再上場を選択肢に入れているという。「成熟市場でも、店舗の利用ニーズは一定あり続ける」(ファンド関係者)。 業界の先行きには、明るい要素も無いわけではない。総務省によると、値下げで下落した3大キャリアの平均ARPU(1ユーザー当たりの平均売上高)は上昇に転じ、値下げ影響は一服している。店舗削減を推進してきたドコモもここにきて、シェア低下を抑えるためにショップを再重視する姿勢を見せている。こうした変化の兆しをティーガイア再浮揚に結び付けられるか、ベインの手腕が試される。
一方で今回のTOBを機に、業界再編がさらに加速する可能性は高い。ノジマだけでなく、同じく家電量販店のビックカメラも2023年にTDモバイルの事業を承継。代理店からの撤退が目立つ商社でも、兼松傘下の兼松コミュニケーションズは、地場ショップ買収に積極的だ。「代理店は規模がないと利益を出せないビジネスになってきている。さらに合従連衡が進み、数が収斂されていくのではないか」(MM総研の横田副所長)。 携帯ショップ最大手の買収があらわにした、通信業界の大きな変貌。最終的にどのような姿に着地していくのか、業界は岐路を迎えている。
茶山 瞭 :東洋経済 記者