自衛隊の音楽隊、音楽大学卒業でも「狭き門」…射撃や野営の訓練もしながら演奏活動「市民との架け橋に」
衛生救護員だったが、全国屈指の実力で知られる精華女子高(福岡市)でブラスバンドに打ち込んだ経験を生かし、「もっと人に寄り添える仕事をしたい」と転属を直訴した。隊舎の屋上やカラオケボックスなどで猛練習に励み、異例の入隊が認められた長田3曹は「感謝の思いを持って演奏を続けたい」と話す。
「音楽は主義主張を超えて人の心を豊かにしてくれる」と見守るのは、第4音楽隊が所属する陸自第4師団(春日市)の戒田重雄師団長だ。「日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中、音楽隊が市民と自衛隊をつなぐ縁になってくれればうれしい」と期待する。
国賓歓迎や士気高揚担う
外国で「軍楽隊」に位置づけられる音楽隊は、コンサートのほかに国賓への特別儀仗演奏や部隊の士気高揚などを担う。阪神大震災や東日本大震災では被災者を音楽で癒やし、競馬場でのファンファーレや大相撲の千秋楽で「君が代」を演奏することでも知られる。
陸自では中央音楽隊(東京)が1951年、警察予備隊音楽隊として創設されたのが始まり。海空を含め、昨年度末時点で全国32隊に約1400人が所属する。南太平洋の島国・パプアニューギニアで軍楽隊を育成するなど国際交流も盛んで、自衛隊幹部は「国民を励まし、国賓を迎える際に国の威容も示す音楽隊は、国の象徴的な存在だ」と話す。