自衛隊の音楽隊、音楽大学卒業でも「狭き門」…射撃や野営の訓練もしながら演奏活動「市民との架け橋に」
今年で創設70周年を迎えた自衛隊で、市民向けのコンサートから厳粛な式典での演奏まで幅広い任務を担ってきたのが音楽隊だ。近年は音大を卒業しても入隊が難しい「狭き門」となっているが、「市民と自衛隊をつなぐ架け橋になりたい」という願いを胸に、九州出身者を含む多くの若者がその門をたたいている。(池園昌隆) 【写真】迫力あふれる演奏で会場を沸かせた陸自第4音楽隊
「お客さんの笑顔がみられてうれしい」
福岡県春日市に拠点を置く陸上自衛隊第4音楽隊が20日夜、地元のホールでクリスマスコンサートを開いた。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」などを演奏し、親子連れら約600人を楽しませた。
10月に入隊したばかりの佐佐木萌1士(22)は、サックスのソロ演奏を初めて披露。「緊張したけれど、お客さんの笑顔がみられてうれしい」と安堵の表情を浮かべた。生まれ育った熊本県天草市で小学4年からサックスを始め、指導に訪れた音楽隊のさっそうとした振る舞いに心引かれていた。
約40人の隊員は高齢者施設への慰問や子どもへの指導などを続けるが、自衛隊員として射撃や野営の訓練にも参加し、災害時には被災地に向かうこともある。
短大の音楽学科を卒業した佐佐木1士は「訓練は大変」と笑うが、「子どもの頃から憧れていた音楽隊の一員として、多くの人の感動を呼ぶ演奏を届けたい」と話す。隊長の林田広記2尉(59)は「周りをしっかり見て、合わせられるようになった」と目を細める。
一般幹部候補生の合格倍率は16倍
防衛省によると、昨年度、音楽隊を志望した一般幹部候補生の合格倍率は16倍で、候補生全体の平均倍率(7・4倍)を上回る。第4音楽隊の新隊員4人を含め、多くが音楽系の大学や短大を卒業しており、林田隊長は「みな情熱を持つ即戦力だ」と語る。武蔵野音大出身の小林千尋1士(24)は「自衛隊は堅いイメージを持たれがちなので、にぎやかで楽しい演奏を心がけている」と意欲をみせる。
音大出の「エリート」に交じって夢を追う若者も。トランペットを吹く福岡市出身の長田朱香3曹(27)だ。