野球と地域活性化の“二刀流”に挑む 島根初の女子硬式野球クラブチーム「島根フィルティーズ」2025年本格始動へ
中国山地の山あいにある島根・川本町の人口は約3000人。人口減少に歯止めをかけるため、若い世代の定住を促すきっかけにと「女子野球」のクラブチームを創設。2025年4月の本格始動に向け準備を進めている。 【画像】近鉄、ダイエーでプレーした元プロ野球選手の森山監督
人口減少…高校卒業後の受け皿目指す
川本町を拠点に、女子硬式野球チーム「島根フィルティーズ」が2025年4月に本格的に活動を始める。 川本町が「女子野球」チームを立ち上げた背景にあるのが、人口減少、少子高齢化の問題だ。2024年の人口は約3000人と、10年間で約15%減少。65歳以上が占める割合も45%と深刻な状況だ。 そこで、2019年、若者の定住対策として「女子野球」を中心に据えた。 町内唯一の高校である島根中央高校では2012年から、生徒の確保に向けカリキュラムや部活動などを通じて特色を打ち出し学校の魅力を向上させる取り組みを進めている。 その一環で2019年に創設されたのが、県内初の女子硬式野球部だった。 普及途上の女子硬式野球は、高校レベルでは練習環境が十分整わないことが多い中、島根中央高校は指導者・設備をそろえて、県外からも生徒を受け入れ、2024年度は26人が所属。生徒の確保にも貢献している。 ただ、創部から5年が経ち、卒業した部員の「受け皿」がないという課題も見えてきた。町内にも県内にも社会人チームがなく、卒業後も競技を続けたい生徒は、県外に出るほかないのが現状だ。 そこで、高校時代の3年間を川本で過ごした卒業生を、町内に引き留めたいと立ち上げたのが、社会人クラブチーム「島根フィルティーズ」だ。 都市部の若者が地方に移住し地域活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の制度を活用し、国の支援を得て、選手の給料を3年間負担する。 その後は地元の企業や団体が選手を従業員として雇用し生計を支え、選手たちが競技に集中できるよう、地域を挙げてサポートする仕組みを目指している。
監督は元プロ選手 強豪校のOGも
2024年11月、川本町にある屋内野球練習場を訪ねると、キャッチボールをする2人の女子選手がいた。ともに「島根フィルティーズ」に入団が決まっている福岡県出身の田邉澪さん(19)と鹿児島県出身の紺屋唯さん(18)だ。 高校時代、硬式野球部でプレーした2人は、卒業後も野球を続けられる環境を探す中で「島根フィルティーズ」と出会った。 川本町の島根中央高校に「野球留学」していた田邉さんは、2024年3月の卒業後、広島県内のクラブチームでプレーしたが、3年間過ごした川本町は「野球をできる環境がすごくいい」と改めて感じ、戻ってきた。フィルティーズでプレーし、将来は日本代表を目指す。 強豪・神村学園高校出身の紺屋さんも、川本町は「町全体が応援してくれる。働きやすかったり、プレーしやすかったりする」と、入団を決意したそうだ。 「島根フィルティーズ」には、すでに13人の選手の入団が内定している。18歳から27歳まで、東京、広島、鹿児島などいずれも県外出身だ。 こうした選手たちをスカウトしてきたのは、一足早く2024年に就任した森山一人監督。大田市出身で、近鉄、ダイエーでプレーした経験をもつ元プロ選手だ。 自宅がある広島と川本を行き来しながら、選手たちの練習を見守っている。 「一緒に練習してすごいなと思うことがあるので、すごく楽しみです」とスカウトの手ごたえを感じている森山監督。2025年の本格始動に向けて、「町おこしというところがチームの柱であるので、川本町の皆さんに認めてもらえるようになって、試合をしたい」と意気込む。
野球と地域活性化“二刀流”に期待
川本町が目指す「女子野球」のまち。中心となって進めているのが、川本町まちづくり推進課の伊藤和哉課長だ。 伊藤課長は「1つは野球で、もう1つが地域の活性化。若い視点だとか、川本に初めて来た人の視点で町の情報発信をしていただきたい」とフィルティーズの選手たちに期待をかける。 フィルティーズは今後、年5人程度メンバーを増やし、活動開始から3年目には20人程度に拡大する計画で、全国トップレベルのチームを目指すことになる。 若い世代を呼び込み、町に活気を取り戻す。 地域の期待を背に「島根フィルティーズ」は2025年4月、大きな一歩を踏み出す。 (TSKさんいん中央テレビ)
TSKさんいん中央テレビ