「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある
◇世界に広がる「道の駅」には、DX化を進めることでさらなる可能性が このような地域の拠点として機能する「道の駅」のシステムは、海外にも輸出され、今や“Michi-no-Eki”として国際的に認知されつつあります。地域の人々が集まり、顔の見える関係を構築する「道の駅」は、発展途上国の地域防災、防犯に役立つ素晴らしいシステムではないか。そう考えられた元国連職員の鹿野和子さんが、南房総市8駅ネットワークの立役者でもある、元南房総市企画部長の加藤文男さんを国連に紹介されたのがきっかけです。そこから加藤さんが、JICA(国際協力機構)のプロジェクトとして、現地に「道の駅」を設置するための指導にあたり、インドネシア、タイ、マレーシアなど、これまで発展途上国9カ国にODA(政府開発援助)で「道の駅」が設置されています (「マナド近隣、花の町に新たな道の駅オープン:インドネシア二駅目の日本式:南房総市と協力」JICA、https://www.jica.go.jp/overseas/indonesia/information/press/2023/20230607.html)。 海外にこれまでに設置された「道の駅」は、完全に公共施設として建てたところもあれば、地元の商店会のようなところに「道の駅」の機能を取り入れたところもあるなど、国によって受け入れ方はさまざまですが、人が集まる地域の結節点というのは、日本と変わらないコンセプトです。地域で採れた農産物などを販売するといったところも日本と変わらず、各国の地域防犯、防災、観光の拠点として経済活性化に役立てられ、JICAのプロジェクトが終了したあとも、継続されています。「道の駅」には、混迷を深める社会のさまざまな課題に対応できる有効なポテンシャルがあります。今後も「道の駅」は、日本だけでなく世界的に、人々の集うことができるにぎわいと平和をもたらす拠点として発展していくでしょう。 コロナ禍でも「道の駅」は、ソーシャルディスタンスが保てる唯一の観光地とされ、入場者数が、一般的な民間観光施設のように激減することはありませんでした。さらに現在、コロナ禍後のニューノーマルの進展もあり、地方移住や2拠点生活をする方が増えています。「道の駅」のDX化を進めることで、ワーケーションの拠点として、あるいは、地方でのスタートアップや起業を促す拠点として、設備の整備を図る「道の駅」が出てきています。 地域の人口規模の縮小は、その地域の税収減を招き、教育、医療、福祉等の行政サービスや地域交通、地域コミュニティ機能の低下につながります。そして、より良い教育、医療・福祉サービスや生活の利便性を求めて、都市部への人口流出がさらに進むことになります。「道の駅」を拠点とすることで、日本国内のどの土地にあっても、都市部と同質の教育・医療や交通・コミュニティなどの公共サービスを享受できるようになれば、このような都市への人口移動・集中は無くなるでしょう。「道の駅」は、それぞれの地域社会の状況に適応できる制度です。そこには地域の人が、愛着のある生まれ育った地元で、ずっと住み続けられるための拠点となり得るポテンシャルがあります。コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの衝突など、世界情勢は混迷を極めています。時代の変化応じて進化・変容できる「道の駅」は、大転換期と言われる今こそ、地域の活性化にとって非常に重要な役割を果たす制度としてますます発展すると確信します。
松尾 隆策(明治大学 商学部 特任准教授)