「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある
◇休憩・情報発信・地域連携に加え、防災や医療・福祉などの機能も 各「道の駅」は、それぞれの地域の特色を生かした独自のコンセプトで、設置・運営が行われています。運営サイドの創意工夫で、地場産業振興、地域コミュニティの活性化、交流人口の増大などが図られています。近年では、防災機能、医療・福祉機能、住民サービス機能など、その公的機能もますます拡大。買い物難民対策や過疎地域の自動運転交通(MaaS)の拠点などにもなってきています。 「道の駅」の防災機能が注目されるようになったのは、2004年に新潟県中越地震が起こったときのこと。被災された人たちが自然発生的に、「道の駅」へ集まってきたのです。被災地にあるいくつかの「道の駅」では、電話等の通信手段が機能しないなか、被災された人たちが施設の壁を伝言板のように使って、お互いの安否確認や連絡を取り合い、炊き出しの実施や支援物資の配給等が行われ、設置者である国交省の方がむしろ驚かれたといいます。そこから「道の駅」は、防災拠点としても注目され始め、各地でその機能が強化されるようになっていきました。 2011年の東日本大震災の際には、宮城県にある6つの「道の駅」が復興拠点となった「農海林ロード6」の話題が、マスコミ等で大きく取り上げられました。道路が遮断され外部からの物資が届かない状況下、6駅の間で食料や防災用品を融通し合って、復興に寄与したのです。 それぞれで補い合って、連携がとれるのも「道の駅」の良さです。千葉県南房総市にある8つの「道の駅」では、防災、農産物、観光などの機能を分担し、8駅でネットワークを組んで大きな機能を果たしています。この8駅は2020年、国交省が模範となる「道の駅」を重点的に支援する「重点『道の駅』」に選定。近年は全国的に「道の駅」のネットワークが注目されており、岐阜県の「東濃10駅ネットワーク」も、地域課題の解決に大きな成果を上げています。今後も「道の駅」相互のネットワークにより、機能を分担する傾向が高まると思われます。 人口減少の激しい近年、全国の公民館数はピーク時から3割ほど減少していますが、これまでに集客数が振るわなく赤字が拡大したために廃止された「道の駅」はわずか4駅にすぎません。採算の合わない「ハコモノ」と呼ばれた公共施設とは異なり、「道の駅」はそれ自体が独立採算を基本とし、「お金を稼げる」ことが、その持続可能性につながっています。「道の駅」が、本来のコンセプトである「地域の賑わいの場」であるためには、公共性・公益性は、非常に重要だといえます。生産効率性を重視する民間の観光施設や商業施設は、利益至上主義に偏りやすく、人口減少や高齢化が進む中山間地域の活性化の拠点としてはふさわしくありません。とはいえ、赤字が拡大し、自治体の税金で埋め合わせるような「道の駅」であれば、経済活性化の原動力にはなり得ません。「道の駅」が上手く地域活性化のために機能するには、地域の雇用、生産手段、そして地域で採れた原材料を利用して生産・分配が図られ、地域内だけでなく、地域外からの消費者をも呼び込める「地域内経済循環」を拡大することが重要となってきます。また、「防災」や「住民サービス」などの公益的機能は、必ずしも税金等の公的資金の負担増につながるとも言い切れません。私のこれまでの研究成果によれば、備蓄倉庫、広場や通信設備などの防災機能を重視した「道の駅」ほど、入場者数、売上高の増加につながったという計量分析結果も出ています。市役所の支所などを設置し、住民票の取得などの住民サービスを備えることで、買い物客の増加も見込めます。「道の駅」が今後も、持続的に発展するためには、時代に応じた進化・変容が重要だと思われます。