「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある
松尾 隆策(明治大学 商学部 特任准教授) 人口減少や高齢化、地域産業の衰退といった課題を抱える地方において、「道の駅」は地域の暮らしを守る拠点ともいうべき機能を担うようになってきています。今やすっかり日本社会に根づき、時代の流れとともに進化し続ける「道の駅」。活性化にとどまらず、各地域が抱える多様な課題を解決する糸口を握っているとも言えるでしょう。 ◇「道の駅」の基本コンセプトは「地域とともにつくる個性豊かなにぎわいの場」 日本各地の道路沿いにある「道の駅」は、国土交通省が認定する公設民営施設です。主に市町村によって設置され、第3セクターやJA、地元企業などが指定管理者として運営を担っています。その基本コンセプトは、「地域とともにつくる個性豊かなにぎわいの場」。24時間無料で利用できる駐車場やトイレからなる「休憩」、道路や観光、防災などに関する「情報発信」、文化共用施設や観光レクリエーション施設などを備えた地域振興施設によって地域同志あるいは地域と来訪者との交流・連携を図る「地域連携」という、3つの基本機能を備えています。 さらに今や多くの「道の駅」で一番人気となっているのが、各地域の農産物や特産品などの販売を担う農産物直売所や特産品販売所です。さらに地元産のメニューを提供するレストランや温泉施設、宿泊施設も含めた「経済的機能」によって、各地で需要が拡大。1993年の制度発足以降、設置数は急速に伸びて、2023年の時点で1,209駅に達しています。「道の駅」は、2014年からアクション・プログラムが動きだした「観光立国宣言」や、2015年が元年と位置づけられた「地方創生」、その両政策の拠点施設として、地域活性化の原動力になっています。 そもそも「道の駅」が生まれたきっかけは、1990年1月に広島県で開かれた、中国地域まちづくり交流会(現・中国地域づくり交流会)のシンポジウムです。地域の課題を一番よく知っているのは、そこに住む人たちだという「内発的発展」の考え方から、地域住民主導の活性化施策を進めるために各地で開かれていた会議の一つなのですが、その場で山口県の船方農場グループの当時の代表だった坂本多旦さんが「鉄道のように、道路にも駅があってもいいのでは」と発言されました。とてもザックバランな方だった坂本さんは、会場に到着するまでの道中、お手洗いが見つからず苦労したというエピソードを話され、会議が盛り上がったのだそうです。そこから議論が進められ、1992年に社会実験がスタート。1993年には「道の駅」の登録・案内制度が発足し、第1回目の登録103駅から動きだしました。 始まった当初は駐車場とトイレを設けたスペースに「道の駅」と掲げるぐらいでしたが、それに反応したのが地元の人たちです。道路を通過する人々がせっかく立ち寄ってくれるのであれば、地域の農産物や特産品を置いてもいいのではと活動を始めます。次第に「道の駅」は、トイレと駐車場を備えた単なるドライバーのための休憩施設から、駅ごとに地方の特色や個性を表現し、観光情報などの発信やさまざまなイベントを開催する利用者が楽しめる施設へと変容していきました。