〈スーパーに並ぶズワイガニの「バルダイ種」って何?〉ビジネスチャンスを失っている日本のもったいない使い方
1980年代の大量発生時も獲り尽くす
歴史をひも解くと、1980年代にも北海道で大ズワイガニが大量に発生しています。具体的には85年に100トン台だった漁獲量が1986年に2300トン、1987年に1400トンと大漁になったものの、その後は獲れなくなって鎮静化しています。 日本海では、オスのズワイガニの甲羅の幅は省令で90ミリメートル(㎜)以上、自主規制で100㎜以上などと規制して漁獲しています。この大きさになるには8~10年かかります。一方で、昨年(23年)の北海道の大ズワイガニは50~70㎜前後のカニでも獲っています。今年は成長しているといってもまだ子供です。 カレイなどの漁業はもちろん重要で、その網に絡まってしまう大ズワイガニの子供は、現場からしたら大迷惑な存在です。しかしながら、なぜこのような「絶好の好機」を80年代に続き、再び潰してしまう過ちをしてしまうのか、筆者には残念でなりません。 ノルウェーでも同じようなケースがありました(漁獲量推移・下のグラフ参照)が、資源管理の効果で今ではズワイガニは莫大な財産になっています。23年の水揚げ量は7643トンで水揚げ金額62億円(NOK=13.8円)。 ノルウェーの沖合では、96年に初めてカニの資源が確認されました。その後ノルウェーは、15年以上も増えるのを待って、12年からようやく獲り始めました。25年には約1万2000トンのズワイガニが漁獲される予定です。ちなみに日本のズワイガニ漁は全国で約2000トン(23年)に過ぎません。
ノルウェーではタラバガニも大きな財産になっています。23年の水揚げ量は2794トンで108億円(同)でした。ノルウェーのタラバガニはもともと、ロシアから移動してきた資源です。 当初は、サーモンの養殖いけすに引っかかる邪魔者扱いでした。しかしながら、その価値に気づき、漁獲枠を設定して大切な資源に変えています。 もともとはいなかったノルウェーのズワイガニとタラバガニ。その水揚げ金額は合計約170億円(23年)。ズワイガニの漁獲枠の大幅増で、来年はさらに増える見通しです。 もちろん、北海道でのカレイ漁業や他の漁業も重要です。しかしながら、もし大ズワイガニを大きくして主要漁業に育てた場合の水揚げ金額や、地域社会への影響を戦略的に考えないのは実に惜しいのではないでしょうか。恐らく補助金を使って他の漁を減らしても、将来大ズワイガニの漁業で十分採算が取れる可能性もあります。 残念ながら、大ズワイガニはすでに獲りすぎで手遅れに差し掛かっていると思います。海外の成功例にもっと目を向けるべきではないかと筆者は考えます。