“ロシア、欧米への情報工作成功しつつある”米戦争研究所が警鐘
アメリカの政策研究機関「戦争研究所」は27日、ロシアが欧米各国にウクライナ支援を無駄だと思わせるため「ロシアが優勢」と見せかける情報工作を全力で行っていて成功を収めつつあると警鐘を鳴らす分析を公表しました。 戦争研究所は27日に公表した分析で、西側が結束してロシアに対抗し、自らの能力を動員すれば、ロシアは負ける可能性が高いとした上で、にもかかわらず「この戦争はロシアが優勢であり、 (西側は)勝てないという考えは、ロシアの情報工作によるものだ」と指摘しました。 この情報工作はソ連時代に理論化された「反射的コントロール」と呼ばれる考えが使われていて、「自陣営があらかじめ決めた結論を、相手陣営が自ら導き出すよう、その判断のもととなる情報を送り込むこと」だとしています。 その上で、NATO=北大西洋条約機構が長年ロシアに挑発的な行動をとっておらず、ウクライナの加盟交渉も停滞していたにもかかわらず「プーチン大統領はウクライナのNATO加盟の議論がロシアに対する明確で切迫した危険だったとの嘘の主張で侵攻を正当化した」と指摘しています。 そして、欧米各国でロシアの一方的な主張が真剣に考慮されていると指摘し、「ロシアの長期的な情報工作の成功を示している」「『認知の操作』はロシアの核心的な能力のひとつで、ロシアにとってウクライナで勝利する唯一の戦略として、西側の人々に全力で実行されている」と警告しています。 戦争研究所によりますと、ロシアによるこうした事実に基づかない主張を含む情報工作が、西側諸国の判断に影響を与え、現実の戦場に反映されているということです。 ウクライナが無人機などでロシア国内を攻撃するなか、「国内への攻撃に西側が供与した兵器が使われたというだけで、プーチン大統領が核による報復をするとはとうてい考えられない」にもかかわらず、核の威嚇を背景に西側の軍事支援の決断が遅れ、去年のウクライナ軍の反転攻勢の失敗につながったとしています。 また、ロシアは西側の「平和を求める」という本能的な傾向につけこむことに長けているとも指摘しています。 「侵攻開始後に出された、ロシアによる『和平案』と称されるものはすべてウクライナの主権の破壊につながる要求が含まれていた」「ロシアに関しては、『戦闘をやめる』ことは『殺戮をやめる』ことを意味しない。占領地域で拷問などによる殺害は続く」と、安易な停戦論を強く警告しています。 結論として、西側は結束すればロシアに対し「優位性を持っているが、それを使う決断をしなければならない」とし、それには「兵器生産の強化やより大きなリスクを受け入れること」などが含まれると主張しています。 また、他国を一方的に侵略したロシアが、自国への攻撃を免れることを要求する権利はないとして、ウクライナへの武器供与の条件とされる「ロシア国内にある正当な軍事的目標を攻撃することの制約」を西側は取り除かなければならないと提案しています。 戦争研究所は去年12月、ウクライナが敗北した場合のアメリカの軍事的・経済的負担が「天文学的になる」とする分析を公表しています。 今回はロシアの情報工作の脅威を警告し、西側のより積極的なウクライナ支援を強く求めていて、アメリカなどの軍事支援が停滞していることへの強い危機感を示す内容になっています。