「武漢といえばコロナの印象」初の感染者確認から5年、市民から嘆きの声…閑散とする繁華街
新型コロナウイルスの感染が最初に広がった中国湖北省武漢市の政府が、原因不明の肺炎患者の存在を発表してから31日で5年となる。中国政府は「全体的に回復している」とコロナ禍からの復興を強調するが、武漢では長らく続いた行動制限「ゼロコロナ政策」が今でも経済に影響を与え、市民生活に影を落としていた。(武漢で 田村美穂) 【図】一目でわかる…コロナが「まだ収束していない」と感じる人はこんなにいる
「武漢といえばコロナという印象になっている」
今月上旬に武漢市を訪れると、市民らの嘆きの声が聞かれた。繁華街は閑散とし、週末でも人通りは多くない。地元住民らによると、コロナ禍前の半分程度という。ゼロコロナ政策で景気が冷え込み、飲食店や商業施設の利用者が急減したことが一因だ。タクシー運転手の男性(52)は「売り上げが3分の1以下に減った」と政府への不満を漏らした。
武漢市政府の発表によると、同市の失業率はコロナ禍前の2018、19年はそれぞれ、2・14%、2・02%と2%程度だったが、20年には3・04%、21年に2・92%と3%前後に上昇。22年は2・61%で、コロナ禍前と比べて高い状態が続く。
初期に感染者が集中した市中心部の「華南海鮮卸売市場」は、タケネズミやタヌキといった食用の野生動物が扱われ、感染源の可能性が高いとされた。市場は封鎖されたものの、世界的なイメージ悪化を招いた。
こうした印象を払拭(ふっしょく)するかのように、市場は昨春、約17キロ・メートル離れた郊外に移転し、再開した。「新華南海鮮水産」と看板が掲げられた市場は、市によると、元の5倍超の面積だ。新築の建物が並び、鮮魚店や精肉店などが連なるが、客足はほぼない。
元の市場で20年近く海産物店を経営していた男性店主(64)は、昨春の再開とともに移転した。「売り上げが半分程度になった」と語り、「負の象徴」のイメージから抜け出せないことにいらだちを隠せずにいた。