竹久夢二の「幻の名画」こと《アマリリス》に対面。東京都庭園美術館『YUMEJI展』レポート
デザイナーとしての活躍と、海外渡航時のスケッチ初公開
また、デザイナーとしても活躍した夢二の、例えば封筒や千代紙、本の表紙などの作品も目を引く。本展のキャプションによると、夢二が上京した1901年はパリ万国博覧会で「アール・ヌーヴォー」が国際的に大流行し日本に紹介され始めた時期。夢二も影響を受けたといい、アール・ヌーヴォー様式と、日本の浮世絵などの要素を融合させた独自のスタイルを確立していったとされている。アール・ヌーヴォーは、グラフィックデザインやインテリアデザインなど幅広い分野にわたった芸術運動でもあった。 本展では、夢二が晩年の1931年から約2年間、アメリカやヨーロッパに滞在した際のスケッチも公開している。これは、友人であり、夢二が亡くなるまで治療にあたった医師の手元に残されたものだ。今回が初めての公開であるという。 鶴学芸員は、「絵画の可能性を求めて海をわたった夢二ですが、帰国後病にたおれ、志半ばでこの世を去りました」とし、「本展にて海外で描かれた油彩画やスケッチを見て、夢二がもう少し命をながらえていたのであれば、また新たな展開があったのかもしれない──そのように感じ取っていただければうれしい」と話していた。
テキスト・撮影 by 今川彩香