ドイツ語の変種「キーツドイツ語」から見えてくる、日本の現在地
◇日本が取り入れる言葉は英語一辺倒な傾向が強く、ほぼダイレクトに使いがち すべての言語に変化はあり、その評価は、それぞれの立場によって異なります。たとえば、言語が“乱れて”嘆かわしいと評する人がいる一方で、それらを“変容”としてニュートラルに受け止める人も大勢います。 変化としてわかりやすいのは、英語からの借用語といった語彙レベルのものです。2023年にドイツで流行した若者ことばとしては、アメリカの俗語でもある「goofy」(天然ボケ的なニュアンス)や「side eye」(疑いの目で見ること)などが挙げられます。SNSを中心として、若い世代ではとくに英語からの借用語を使う傾向が見られます。 さらにドイツでは、英語を取り入れる際に、意味のみを抜き取って別のドイツ語を当てはめるケースが往々にしてあります。たとえば「ダウンロードする」を意味する「downloaden」は、英語の「download」に、「-en 」をつけてドイツ語化された単語です。しかし「herunterladen」(積み入れる)といった別の意訳も存在します。また、パソコンのシャットダウンについては、おそらくその語の使用頻度がやや低いところから、「shutdownen」というドイツ語化した表現はなく、「hinunterfahren」という言い方をします。このような英語の借用方法は、ドイツだけでなく、中国や朝鮮半島でもよく見られます。 一方、日本で取り入れられる場合、英語由来の言葉をほぼ直接、あるいは若干変形してそのまま日本語に組み込みがちです。たとえば「バリアフリー」もそうですが、お年寄りにはピンとこないため、「段差解消」や「段差のない」といった翻訳が独立行政法人国立国語研究所からも提案されています。 英単語を活用しつつも、母語に意訳しようとするドイツに対し、日本には「クーラー」「ゲッツー」「レベルアップ」などの和製英語も多く存在します。言葉を取り入れる際、いったん咀嚼し、自分たちの言語に翻案する過程を経ることで、言葉や概念の捉え方、さらには自分たちの世界との向き合い方が異なってくるのかもしれません。ドイツ語と対照することで、日本語や日本のあり方も考えさせられます。