健康情報、必要な人にどうしたら届くか 元市職員の保健師が選んだのは「カフェ」
札幌市厚別区に、保健師が手がけるコミュニティーカフェがある。元市職員でもある森本友香さん(49)が「健康に関する情報を、必要とする人に、どうしたら適切に届けられるか」と悩んだ末にたどり着いた答えだ。目指すのは、利用者同士が栄養面に配慮した食事を楽しんだり、情報を共有したりして、長く健康に過ごしてもらうこと。「おしゃべりを楽しんでほっとして、体だけでなく心も健康になって元気に過ごしてほしい」と願う。(共同通信=吉野桃子) 「どう、元気」。カフェ「あるくっちゃ」を毎週利用する同区の中鉢博さん(90)は注文を取りに来たなじみのスタッフや他の常連客との会話を楽しむ。お気に入りのメニューは認知症予防に良いとされるサバを使ったカレーだ。値段は400円。スタッフは8人全員がボランティアで、その分安くできる。中鉢さんは「健康的な料理が手頃な値段で通いやすく、友達にも会える」と喜ぶ。 メニュー表のつくりも独特だ。注文待ちの間に読めるよう、後半には介護者や認知症支援者向けのイベントのチラシを掲載。チラシを目にしていた利用者を地域包括支援センターにつなげた例もあるという。
カフェは昨年8月、特別養護老人ホームの1階に、運営する社会福祉法人が開設。営業は毎週木―土曜日で、約55平方メートルの店内に25席ほどが並ぶ。発案者の森本さんは札幌市職員として約20年働いた後、昨年4月に同法人に転職した。 市職員当時、健康関連のイベントなどを企画した。しかし情報を積極的に得ようとするのは健康な人がほとんどで、情報を届けるべき健康に課題を抱えた人ほどアプローチに苦労した。 そんな経験から「誰でも気軽に立ち寄れるカフェなら、健康や福祉をあまり意識しない人にも情報を届けやすいのでは」との発想が生まれた。「ここに来れば社会的なつながりもできる。元気に過ごせる要素が全部そろう、そんな場所になればいいですね」。森本さんは笑顔を見せた。