第93回選抜高校野球 1回戦 東播磨、一歩及ばず 攻守に粘り、堂々初舞台 /兵庫
<センバツ2021> 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)で22日、21世紀枠で初出場した東播磨は1回戦で明豊(大分)と対戦し延長十一回で、9―10の接戦で敗退した。アルプススタンドに応援に駆けつけた全校生徒や卒業生、OBなど約900人は攻守ともに粘り強く戦い抜いた選手らに惜しみない拍手を送った。【後藤奈緒、荻野公一、熊谷佐和子、中田博維】 試合は初回から動いた。1死で2番の島津知貴選手(3年)が左翼安打で出塁し、2つの四球と、鈴木悠仁投手(3年)の右翼二塁打で先制。続く熊谷海斗選手(3年)の安打で得点を重ねた。紫色のチームカラーのジャンパーを着た応援団は歓声を上げ、マネジャーの大河内友羅さん(3年)は「初回から3点も取れるなんて」と涙ぐんだ。 だが一回裏、「緊張した」という鈴木投手は先頭打者に四球を与え、安打3本を浴びて同点に追いつかれる。追いかける六回、制球が定まらない相手投手の四球で1点を追加したが、同点で守る六回裏に再び引き離された。 スタンドは選手の背中を押し続けた。応援曲を事前に録音した吹奏楽部員は選手が希望した曲を譜面に書き落とすなど、この日のために準備してきた。応援する生徒らは曲ごとに振り付けを考えた。四回に継投した若杉錬投手(3年)に母・美幸さん(46)は「笑顔だから大丈夫」と胸の前で手を合わせた。 七回、先頭の原正宗主将(3年)がチームを活気づけた。右中間安打で、一気に三塁まで走ると、父・正太郎さん(52)は「絶対狙うと思った」とにっこり。スタンドの選手らはメガホンをたたいて喜んだ。 九回1死、三塁の高山隼選手(2年)は「(打席の)鈴木さんを信じて走った」と鈴木投手の内野ゴロで生還し同点に。高山選手の兄で東播磨OBの和也さん(21)は「練習の成果が出た」と、他のOBらと肩を組んで喜んだ。 延長十一回裏、「指に引っかかってしまった」と振り返った鈴木投手の球は暴投になり、相手走者が生還した。東播磨ナインの春は幕を閉じたが、スタンドは温かい拍手で選手をねぎらった。前列で応援した前主将の宮本一輝さん(18)は健闘した選手らに「夏に帰ってこい」と声をかけ、涙をにじませていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇反撃の口火切る安打 原正宗主将(3年) 先頭打者として、思い切りのいいスイングで常にチームを活気づけてきた。チームの目標を「甲子園で1勝」とし、「福村(順一)監督の甲子園ベスト8の記録を僕たちで塗り替えたい」との思いで晴れの舞台に臨んだ。 試合が雨天順延となった前日は「スイングの切れがあまり出ず、不安だった」。だが、本番は初回からフルスイングだった。乱打戦となり、4点差に突き放された七回、右中間を破る三塁打を放ち、反撃の口火を切った。後続も続き、1点差まで迫った。 延長十回1死二塁、一打勝ち越しの場面で回ってきた打席。「絶対に初球で振る」と決めて立ったが、打ち取られた。「実力がなかっただけ。後悔はしていない」。スタンドで声援を送った父正太郎さん(52)は「強豪相手に臆することなく、楽しそうにプレーしていた」とたたえた。 目標はかなわなかったが、「これで終わりではない。また甲子園で野球をしたい」と目標を新たにしていた。 ……………………………………………………………………………………………………… 東播磨 30100130100=9 30200400001=10 明豊 (延長十回) 〔神戸版〕