箱根駅伝Stories/試練の1年乗り越えた日体大・山崎丞 7年ぶりシードへ「他大学のエースと戦えるのは自分」
新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。 箱根駅伝2025 日体大のエントリー選手名鑑をチェック!
2度目の箱根は一人で過ごした
第100回箱根駅伝、日体大は1区で出遅れる厳しい展開となった。そんな苦しむチームの姿を、山崎丞(現・3年)はただ一人とある場所でテレビ観戦していた。 「大会1週間前にインフルエンザに感染してしまって、大学のゲストハウスに隔離されていました。もちろん走れなかったことは悔しかったですし、当日は会場に行けず、走っている選手を給水などでサポートすることもできずにもどかしい気持ちというか、絶望感みたいなものを感じていました」 昨年度は山崎にとって、試練の1年だった。夏合宿で右脚の腸脛靭帯を痛めて長期離脱があり、万全な状態ではない中で挑んだ前回の箱根予選会では、チーム3番手の個人80位と健闘したものの、その後は同じ部位の痛みを何度も繰り返した。 それでも、本戦にはなんとか間に合わせようと取り組んできたが、最後は思わぬかたちで欠場を強いられた。「前回はチームにまったく貢献することができませんでしたので、今回こそはという思いは強かったですね」。 今季は「昨年度思うように走り込めなかったぶん、もう一度土台をしっかり作ることを意識しました」と話す。レースを6月の全日本大学駅伝関東地区選考会や、7月のホクレンディスタンスチャレンジなど、重要なものに絞った。 トレーニングに重きを置いてきた結果、昨年離脱した夏合宿も「今年は100%消化することができました」と順調ぶりを示す。 特にその成果を発揮したのが、10月の箱根駅伝予選会だ。毎年、集団走を基本の作戦とする日体大だが、季節外れの酷暑。さらには継続中では最多となる77年連続出場が懸かる重圧もあってか、序盤から集団走が崩れだす想定外の展開となる。 自らも集団走でレースを進めていた山崎は、「全体的に思うような走りができていないと感じたので、自分は集団から抜け出して、タイムを稼ぎに行くしかないと思いました」と判断。7km手前からペースアップした。 「集団から抜け出してからのほうが、動きがハマった感じがあって、走りのリズムも良かったです」と振り返るように、5km15分10秒、10㎞30分20秒のイーブンペースから、10㎞から15㎞を15分03秒までラップを上げる。 さらに多くの選手が暑さでペースを落とす終盤も、「暑さとかコンディションが悪いほうが力を発揮できるタイプ」。そう自己分析する山崎は、15kmから20kmを、日本人トップを占めた中央学大の吉田礼志(4年)を1秒上回るラップを刻んだ。チームトップの個人16位(日本人4位)に入る快走を見せた。