自宅で家族殺害された遺族 経済的な負担重く…犯罪被害者の支援に課題
日テレNEWS NNN
突然、命を奪われる理不尽な犯罪が後を絶たない中、政府はきょうから1週間を「犯罪被害者週間」として様々な啓蒙活動を行う予定です。背景には犯罪の被害者らが置かれた厳しい現実があります。自宅で家族を殺害された遺族を取材しました。 ◇ 長野・坂城町。“どこにでもいる普通の家族”が暮らしていた住宅で、約3年前、せい惨な事件が起きました。 市川武範さん(58) 「犯人に追い詰められて倒れた(長女の)杏菜がいたのはこの場所です」 「(二男の)直人が倒れていたフローリングの溝に、まだ黒い…これみんな直人の血痕です」
2020年5月、職場から帰宅した市川さんが目にしたのは、血まみれで倒れる長女・杏菜さん(22)と二男の直人さん(16)の姿でした。2人は、窓ガラスを割り、押し入ってきた面識のない暴力団員の男に銃撃され、亡くなったのです。時が止まったままの自宅。犯人の男は、その場で自殺しました。 市川武範さん(58) 「実はこのじゅうたんも、めくれば犯人の血痕が残っています」 「(杏菜さんは)直人の母親代わりでしたか、直人の側には直人を見守る杏菜の姿があったかな」 突然、2人の子どもを失った市川さん。直面したのは、心の問題だけではありませんでした。 「毎日を生きるのに、精一杯な状態のその時期に、経済の負担がのしかかってくると、それだけでまいってしまう」
自営業の市川さんは事件後、精神的なショックで働けなくなり、収入はゼロになりました。さらに、家族の大切な思い出がつまった自宅は、子ども2人が殺され犯人が自殺した場所に…。市川さんは、とても住む気持ちにはなれませんでした。 市川武範さん(58) 「売るに売れない。こんなとこ誰も買わないじゃないですか」 「そのまま残しても、固定資産税がかかり続ける。損害賠償を取る相手もいない、そういう事件になってしまったんだと」 住むことも、売ることもできない自宅。市川さんは、現在住むアパートの家賃と、自宅のローンと“二重の負担”を背負っています。 「これからいくら払い続けなきゃいけないんだ。犯人が馬鹿な事件を起こさなければ、そんな負担しないで平和に暮らせてたんですよ」 市川さんには国から、犯罪被害者や遺族を支援する給付金が支給されましたが、その額は約680万円。亡くした子ども1人あたり300万円あまりでした。 「あっという間に底をつくのが見えているじゃないですか680万。初期費用、葬儀費用とかね。そういうので出てっちゃうわけですから」
警察庁によりますと2022年度に遺族に支給された給付金の平均額は、(死者1人あたり)およそ743万円。事件前の被害者の収入などから算定されるため、被害者が主婦や学生などの場合は額が少ないケースが多いといいます。 経済的にも追い詰められる被害者遺族。市川さんは…。 市川武範さん(58) 「捜査がおわって、すぐに立ち直って仕事ができる、そういう遺族はなかなかいないと思うんですよ」 「この国に生きてきてよかったと。そう思える社会になるには、国が真剣に向き合って、支援策を援助する手立てを講じていただくことが必要だと思ってます」 (11月25日放送『news every.サタデー』より)