T-BOLAN上野博文、くも膜下出血で3カ月意識不明から、ステージ復帰の奇跡
『Bye For Now』や『離したくはない』など数々のヒット曲で知られるロックバンド「T-BOLAN」が、今夏にインディーズデビューから30周年を記念したライブを行った。同バンドは、人気絶頂の90年代半ばにボーカルの森友嵐士が「心因性発声障害」により歌声を失ったことで活動を休止。15年にはベースの上野博文が「くも膜下出血」で倒れて生死をさまようなど、数々の苦難を経てこの日に臨んだ。約3カ月もの間意識を失い、「高次脳機能障害」のリハビリに励みながらもステージに立った“奇跡の男” が、初めてその復活への道のりと今の胸中を語る――。
くも膜下出血で倒れて発見されたのは5日後
上野がくも膜下出血を発症し、自宅で倒れて意識を失ったのは、15年3月のことだ。 「倒れたときのことはいまだに分からないんです。部屋の中がグチャグチャになっていたので『痛みでのた打ち回っていたんじゃないか』という話ですけど、自分では記憶がなくて。気が付いたらベッドの上にいたという感じですね」 こう話すのも無理はない。 意識を失った上野が発見されたのは、倒れてから5日後。そのまま病院に搬送されてICU(集中治療室)に入り、約3カ月にわたって意識不明の状態となったのだ。 病院に駆け付けたボーカルの森友は、当時の上野の様子をこう明かす。 「発見まで5日間、普通に考えたらかなり厳しいケースですからね。今だから話せますけど、御家族の方も、メンバーやスタッフも『意識の回復さえ難しい状態だろう』とかなりのショックを受けていました。ただ、僕が何度も話し掛けているうちに、意識不明に見えてた上野が涙を流したんです。『コイツ、聞こえているんじゃないか!?』って。僕は理学部出身、医学部にも一時期お世話になっていたこともあって医者の友人が多いんですが、話を聞くと『くも膜下の場合、患者本人の反応がないことから、まず、周りが先にあきらめてしまうケースが多いから、聞こえてると思って話しかけてほしい』とのことだったんです。涙が流れたことで、意識があるんだと気付きました。それで、御家族にお願いして、上野と青木(和義)のバンドのライブの音源を聞かせたり、楽器を病室に持ち込んで指に触れさせたりすることをお願いしていました」