《ブラジル》記者コラム 技能実習全盛で日系人の訪日就労どうなる? 「日本語勉強して直接雇用目指せ」 一般ブラジル人が育成就労行く時代に?
丹野清人教授「日系人も日本語を勉強して直接雇用を目指すべき」
午後は東京都立大学人文社会学部の丹野清人教授が「日本の新たな外国人労働市場―日系人から見た展望と課題―」を講演した。「2016年には在日外国人労働者は100万人だったが、それから7年で倍増した。アジアを中心に多国籍な外国人が激増した。かつての多文化共生は日系人との共存だったが、現在は多国籍になった。昔は日本人の方がポルトガル語やスペイン語を勉強して意思の疎通を図ることもあったが、現在は多言語化が進んだ結果、共通言語は日本語になった。つまり外国人が日本語を覚える必要がある」とこの15年間の在日外国人を取り巻く環境変化を簡潔に説明した。 技能実習ビザでは就労先を変えることができない。だが「日系人の定住者ビザは就労先を変えるだけでなく、地方公務員にまでなれる。技能実習生が働けない職種や会社でも就労可能。にも関わらず、日系人は日本語を覚えず、派遣労働者が多い。今のままで4世ビザの日本語要件などをさらに緩めても儲かるのは派遣会社。日系人本人がメンタルを変え、技術・人文知識・国際業務ビザで訪日するとか、日本語を覚えて直接雇用を優先して安定した生活を目指す指向を強めるべき」と提言した。
日本でポルトガル語による法律相談できる弁護士
在サンパウロ総領事館の新井尚美領事、日伯友好病院の上原アンドレ・カルロス医師に続いて、愛知県名古屋市で在日ブラジル人からの法律相談を多く受ける大嶽達哉弁護士(56歳、愛知県出身)が来伯して「在日ブラジル人を巡る日常の法的諸問題」を実務経験から講演した。大嶽さんは翌4日に本紙編集部を訪れたのでより詳しく取材した。 大嶽さんは2012年から15年まで、日本の弁護士としては初めてCIATE専務理事を務めた。帰国後に名古屋に開いた法律事務所ではポルトガル語を駆使してブラジル人関連の案件を積極的に扱い、日本育ちのブラジル人で初めて日本の弁護士資格を取得した照屋レナン現CIATE専務理事を雇った。 大嶽さんによれば「日本で弁護士資格を取ったブラジル人は3人」で、2人目は東大法学部卒の嘉悦レオナルド裕悟さん(かえつ・ゆうご、26歳、四世)で東京の大手国際法律事務所勤務、3人目の早稲田大学卒の知念友介さんも大嶽法律事務所で勤務しているという。 「日本では弁護士3人に加え、医師や教師にもなっていると聞きます。ブラジル人の定住化が進み、家を購入する人も多く、その件の相談もたくさん受けます」とのこと。同法律事務所で相談を受ける案件の7割がブラジル人関連だといい、件数が一番多いのは交通事故、2番目は離婚や遺産相続など親族関係、3番目が労災関係だが「件数は多くない」という。 「パンデミック以降、親族関係が増えた。仕事が減ってローンが残り、それが夫婦や家族関係に影響し、法律問題になっているようです。以前は共働きを前提にローンを組んでいた人が多く、それがコロナ以降できなくなり深刻な問題になった」とみている。 「日本で自宅をローンで購入し、払えなくなってブラジルに夜逃げした人がいると聞きますが」と質問すると、「日本には自己破産という制度があり、我々に相談してもらって、これをやれば自宅を買ったローンなどの債務を整理できる。でもブラジルにはこの制度がないために、多くの人はあることを知らないで『nome sujo』になると思い詰めてしまっているようです。夜逃げする前にぜひ相談をしてほしい」と呼びかけた。 日本の金融機関としても自己破産なら通常の経理処理で対応できるが、夜逃げで帰伯されてしまうと債務処理が難しくなり、手間と費用がかさむために頭を抱えている状況だという。「リーマンのあとが特にひどかったようです。相談に来てもらえば、家を残しつつ債務整理できる場合もあります」とのこと。 日本でポルトガル語による法律相談ができるところは珍しく、「ワッツアップなどで日本全国から相談を受けています」という。する大嶽達哉法律事務所の電話(愛知県名古屋市中区所在、052・766・5233、この番号がワッツアップ可)まで。