パネルは中国生産、国内最大メガソーラー着工 長崎・宇久島、事業者「有人国境離島守る」
長崎県の五島列島・宇久島(うくじま)と寺島(いずれも佐世保市)で来週、国内最大の太陽光発電所(メガソーラー)が本格着工する。完成すれば両島の面積の1割が中国で生産された太陽光パネルに覆われる。事業を主導する九電工(本社・福岡市)の木下大執行役員(60)は取材に対し、両島が国の「特定有人国境離島」に指定されており、「尖閣諸島のように無人島化しないよう、太陽光発電事業で島を守る決意だ」などと話した。 【写真でみる】五島列島の宇久島と寺島 ■つばきの木から 事業は「宇久島メガソーラーパーク」。京セラ(本社・京都市)や九電工などが出資する事業目的会社が約2千億円を投じ、2025年末の運転開始を目指す。発電全量を九州電力へ売電、国の固定価格買い取り制度により1キロワット時40円の最高額で2040年まで買い取られる。 太陽光パネルの数は152万1520枚に上り、京セラによると、すべて中国にある京セラの工場で生産される。 地元では景観の悪化や土砂崩れの発生を懸念する声も上がるが、木下氏は「島は人口減少が進み、地権者の離島や高齢化に伴い耕作放棄地が拡大している。土地の荒廃による土砂崩れなども見られ、保安林を構成する松は松くい虫で壊滅状態となっている」と説明。 「発電所の事業用地は水路を整備するほか、ツバキの植樹なども計画している。作られた緑ではあるが、荒れ地のまま放置するよりはよいのではないかと考えている」と話し、こう続けた。 「われわれの事業目的会社は、会社をベースに雇用や産業面で地域貢献させていただいている。一般的な投資家の事業目的会社とは、ちょっと事情が違うかなと考えている」 ■事業者が牧草育てる 宇久島は五島列島の北端に位置する。佐世保市宇久行政センターによると、島の人口は今年3月末時点で1747人、平均年齢は約60歳。 木下氏は「皆さん高齢化で島を出て、息子や孫が住む九州本土へ移っていく。年間60~70人のペースで減っており、10年後には半分近くまで減る可能性もある」と指摘する。 隣の寺島は、かつては人口も800人おり、遊郭の建物も残るというが、現在は人口12人、平均年齢約89歳。木下氏が訪ねると、「イノシシを何とかしてほしい」と頼まれたという。畑を荒らすだけでなく、家の座敷にまで入ってくるため「家を守ってほしい」という依頼だった。事業目的会社は集落全体をイノシシ柵で囲ったという。