「これはもう“心”以外にない」指導辞退を経て全国制覇。明秀日立・萬場努監督が大切にする「挑戦」するマインド
12月28日、第102回を迎える全国高校サッカー選手権大会が幕を開ける。本年度も高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグを制した青森山田(青森)を筆頭に全国の強豪高校が名を連ねる。そこで本稿では、長年、高校年代の取材を続けてきた土屋雅史氏の著書『高校サッカー 新時代を戦う監督たち』の抜粋を通して、高校サッカー界の最前線で戦い続ける名将へのインタビューを公開。今回は、2007年に23歳の若さで明秀学園日立高校(茨城県)の監督に就任し、この夏にはインターハイを制した萬場努監督の指導哲学をひも解く。 (インタビュー・構成=土屋雅史、写真=アフロスポーツ)
四中工との初戦の前夜にカニ酢で緊急搬送
――2015年に初めて選手権で全国に出た時は、やっぱりメチャメチャ感慨深かったですか? 萬場:全国出場が決まった瞬間は感慨がありましたけど、会場が駒沢で、相手が四中工(四日市中央工業高校)だったので、正直「え~……」と思っていました(笑)。「初めて出たんだからもう少し甘やかしてよ」という想いはありましたね。県で優勝した時の高揚感は凄かったですけど、その次の日に組み合わせに行って、冷や汗をかいて帰ってきたので、翌日には「四中工じゃん。代表2人もいるらしいよ」という感じになっていました。喜んだのは県で優勝した日だけでした(笑)。 ――でも、初戦でその四中工に逆転で勝ってしまうと。 萬場:はい。ただ、あの試合には緊張感を失うようなことがいっぱいあったんです。前の日に“カニ酢”を食べて、緊急搬送されたヤツが点を取ったんですよ(笑)。だから、もう僕も「明日が試合だ。寝れないな」じゃなくて、「やっと選手もスタッフも病院から帰ってこれた……」だったので、バタバタしながら臨んだ試合でした。逆に考える暇もなかったので、それが良かったのかもしれないですけどね。忙しかったですねえ(笑)。 ――それは想定外すぎますね! 萬場:当事者は本田(光)ってヤツなんですけど、「本田がホテルで吐いてます」「どういうこと?」「たぶん原因はカニだと思うんですけど、病院に連れていってほしいって言ってます」みたいなやり取りがあって、それは大変でした(笑)。 ――いろいろな思い出の詰まった全国初勝利ということでよろしいですか?(笑) 萬場:そうですね。1月1日をあんなに忙しく過ごしたことも初めての経験でしたし、それは嬉しかったですね。スタッフみんなで神社に行ってお参りして、12月31日の試合後は選手は家に帰ったんですけど、1月1日は練習するのに全員集まって、保護者とも新年の挨拶をして、メンバーだけまたホテルに行くみたいな感じで、「うわ~、高校サッカーやってる!」という感じですよね。「年賀状とか何もやってないな」というのと同時に(笑)。アレで高校選手権の魅力に、よりハマりましたよね。「やっぱりいいな」って。