「これはもう“心”以外にない」指導辞退を経て全国制覇。明秀日立・萬場努監督が大切にする「挑戦」するマインド
自分への戒めも込めたチームの合言葉は「挑戦」
――ちなみに萬場さんがよく口にされる「挑戦」という言葉は、チームの合言葉的なものですか? 萬場:そうですね。今では合言葉として使っているんですけど、保護者会が横断幕を作ってくれるという時に、「どんな言葉がいいですか?」と聞かれて、「監督ってそんなことも決めるんだ」って(笑)。それでこれは迂闊に決められないと思いながら、結構考えたんです。 それで当時の国語の先生に相談したら、「なんだかんだ言ってもトライしていくようなことがいいんじゃないの?」と言われて、そこに自分の人生を重ねた時に「オレは挑戦してこなかったな」という想いがあって、自分自身を戒める意味もあって「挑戦」という言葉にしたいなと。自分の安定志向からの脱却というか、生徒に挑戦を求める上では、自分もいろいろなことにチャレンジする人であろうと思ったことがきっかけですね。 ――ちょっと自分に言い聞かせているような部分もあるんですね。 萬場:それはあります。やっぱり人って根っこからそんなに変われるわけではないので、何かを問われた時に基本的には安定路線に行きがちなんですけど、「それって挑戦しているかな?」といったん立ち止まることができるので、それは自分にとって、明秀日立にとってどうなの、ということを考える基準になっていると思いますね。 ――選手たちはその「挑戦」するマインドを、継続して持ってきてくれているなという実感はありますか? 萬場:ちゃんと自分の可能性にトライしているかどうか、みたいな基準は凄く浸透しているので、できないこともできないなりに頑張って、できることはよりブラッシュアップして、ということは凄くいろいろな場面でやってくれていますね。僕よりも彼らの方があっさりそっちに染まっているような印象はあります(笑)。彼らのそういう姿勢は凄いと思いますよ。「右向け、右」って言ったら、あっさり右に行っちゃうような。「オレがこれだけ右に行くかどうかためらってきたのに、オマエら凄いな」みたいな(笑)。若さってやっぱり凄いんです。 ――今回お話を伺うきっかけになったのは、今年のインターハイの日本一だったわけですけど、もともと今の3年生の学年はいろいろなことがあったんですよね? 萬場:はい。今でこそ1つの目標や勝利というものに向かっていますけど、本当に様々なパーソナリティを持っている子が、自分の価値観で動いていることが多かったです。そこからみんなで同じ方向を向こうとすることに、試合の勝ち負けよりも時間が掛かる学年でした。特に1年生の時は大変でしたね。もともと50人ぐらいいる学年で、ウチの通常からしても人数の多い学年なんですけど、なかなか難しかったです。 特に去年みたいにリーダーに依存するということをやっていては、崩壊してしまってまとまらないと思ったので、危険なところにきちっとつなぎ止められる何かを常に残すという意味で、リーダーを決めないという形にしたんです。だから、最初はむしろネガティブな要素から、キャプテンを決めないという形になっていたんですけど、徐々に思ったより多くの数の子たちがこちらの期待を超えるようなアクションを取れるようになってきたことで、少しずつ良い方向に向かってくれているというような感じです。