Jリーグ序盤戦を中村憲剛&佐藤寿人が斬る「ヴェルディを見ているとフロンターレが昇格した時のことを思い出す」
寿人 新潟がいいですよね。継続路線を突き進むなかで、監督の提示するサッカーを選手たちがしっかりと理解している。ある程度リスクを負いながらも前に出ていく姿勢は、見ていても躍動感はありますし、頭でしっかり整理されているからこそチャレンジできているんだなと思います。 単純に「楽しいな」って思える試合が多いんですよ。それを日本人監督が作り上げているのもすごく興味深いですし、補強の面でもある程度限られた予算のなかでうまく立ち回っている。そういうチームには純粋に、がんばってほしいなって思いますね。 憲剛 やっぱり強化と現場のリレーションがうまく取れていると、補強も含めてスムーズですよね。「どういうチームを目指すのか」というプレーモデルがビジョンとしてあって、そこに向かって監督がチーム作りを進めるなかで、フロントがうまくサポートする形を作れているところが、必然的に上にいるのかなと思いますね。何もこれは今に始まったことじゃなく昔からですけど、序盤戦を見るかぎりあらためてそう感じます。 寿人 ヴェルディもがんばっていますよね。まだ結果は出ていないですけど、守備の強度はすごく高いですし、いい若手もいる。ただ、90分持つかっていうところは、まだまだですけど。 憲剛 今年のヴェルディを見ていると、フロンターレが昇格した時のことを思い出すんですよね。やれる手応えは感じているんだけど、最後のところで勝ちきれずに負けたり引き分けたり。 2005年のフロンターレがそうでした。最後のところで「J1の壁」みたいなのにぶち当たって、なかなか勝てなかったですね。だけど、そこでブレずにやりきるなかで、ひとつ勝ったら吹っきれたところがあった。今のヴェルディもそうだと思いますよ。 寿人 85分ぐらいまでは互角にやれていますもんね。 憲剛 本当に勝ちきるためには、そこからの5分、10分をどう過ごすか。その時間帯に力を発揮できるところが、やっぱり強いんです。 ヴェルディはそこの洗礼を浴びている感じがしますけど、ひとつ勝ったら流れは変わっていきそうな感じはしますし、サポーターもそういう空気を感じているんじゃないですかね。何よりJ1でやれる喜びを感じていると思うので。16年ぶりですからね。ここからの奮起を期待しております。 (第20回につづく) 【profile】中村憲剛(なかむら・けんご)1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。 佐藤寿人(さとう・ひさと)1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。
原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei