エズラ・コレクティヴが「ダンスは人生」と語る理由「自由に生きろ、周りの目を気にするな」
アーセナルへの愛情と「Black History」
エズラ・コレクティヴはここ数年の活躍で、UKにおけるブラックカルチャーのアイコンとなり、音楽以外にも様々なフィールドで存在感を発揮している。そのひとつがフットボール(サッカー)。コレオソ兄弟は筋金入りのグーナー(アーセナルのファン)であり、最新作でも「Shaking Body」のイントロに同クラブのレジェンド、イアン・ライトのボイスメッセージが使われている。バンドへの理解をさらに深めるべく、アーセナルについても話を聞いた。 ―SNSでもたびたびアーセナルの話をしていますが、のめり込んだきっかけは? フェミ:まあ他に選択肢がないというか。まず、親がアーセナルのサポーターだったから、ロンドン、ナイジェリアのアイデンティティを形成していくのと同じように、自然と僕の一部になった。10代の頃よりも歳を重ねた今の方が熱心なサポーターになっていると思う。それは音楽がメインになっている生活環境で、音楽と距離をおきたい時の一番の場所になっているからかもしれない。試合を観戦するのも、自分でプレイするのも、マーチを買うのも、テレビで観るのも全部好き。つまりアーセナルの大ファンだってこと。 ―アーセナルの存在は、自分が作る音楽に影響を与えていると思いますか? フェミ:エミレーツ・スタジアム(アーセナルのホーム・スタジアム)のピッチやスタンドではダイバーシティに富んだ光景を目にする。それはまさにロンドンを象徴していて、僕はそのロンドンという場所からすごく影響を受けている。ロンドンに生きる人たちのことを音楽に反映していて、そういう意味でいえば、アーセナルってロンドンを感じるのにふさわしい場所なのかもしれないね。それに、アーセナルがゴールを決めた時のヴィクトリーダンス! あの時の気持ちをどうにか音楽で表現したいって思ってるんだ。音楽には僕の生活、人生が描かれている。だからフットボールも切り離せない。何らかの形で繋がってると思うよ。 ―以前、Black History Monthでアーセナルについてのインタビューを受けていましたよね。アーセナルは、アフリカ系のプレイヤーを積極的に獲得していた印象があります。最近では『Black Arsenal』という本も出版されたほどで、あなたはそこにも出ています。アーセナルにおける「Black History」の部分も、アーセナルに惹かれた理由の一つと言えそうですか? フェミ:そうだね。僕が生まれる以前からブラックの人々はアーセナルに惹かれてきた。70年代のブラックの選手の活躍、それにポール・デイヴィス(80~90年代の16年間、アーセナルを支えた)。アーセナルは輝かしい歴史を築いてきた。そういったカルチャーや歴史があるからこそ、僕の家族はアーセナルをサポートしてきたわけで、その点に僕も共感しているんだ。そのファンベースを受け継いでいるっていえばいいかな。 ―「Black History」といえば今年、大英図書館で『Beyond the Bassline: 500 Years of Black British Music』というエキシビションが開催され、オープニングイベントでエズラ・コレクティヴが演奏していました。あなたも『Beyond the Bassline』をご覧になったと思いますが、その感想も聞かせてください。 フェミ:エズラ・コレクティヴとしてあの場で演奏できて光栄だった。展示自体は、まあまあだったかな。何でもそうだけど、自分が好きなものとかパッションを持ってるものを見たいって思うからね。そういう意味では、僕はUKインストゥルメンタルミュージックが他のジャンルと同等のボリューム感で展示されていたかというと、そうは思わなかった。UKジャズの歴史が展示自体から抜け落ちていた印象を少し持ったんだ。ただ、UKミュージックのサウンドに大きく影響を与えたウィンドラッシュ世代の記録を見られたのはよかった。僕の近年の音楽はその影響が大きいから。あとはグライム、ジャングル、ドラムンベースのアーカイヴもよかった。あのアイコニックな大英図書館で注目を集めている展示に参加できたのは、すごく光栄なことだったよ。 --- エズラ・コレクティヴ 『Dance, No One’s Watching』 発売中 日本盤ボーナス・トラック5曲収録
Mitsutaka Nagira