エズラ・コレクティヴが「ダンスは人生」と語る理由「自由に生きろ、周りの目を気にするな」
アルバムと曲の繋がり、過去作や先人たちとの繋がり
―本作ではインタールードのような曲がいくつもあり、全体が繋がっています。そのこととアルバムのコンセプトやダンスに対する考え方は関係がありますか? フェミ:ああ、それはあえてやったんだ。最近は昔みたいに始めから終わりまで通しでアルバムを聴くようなことはしないから、そういった構成にするのは勇気が必要だった。だけど、始まりがあって終わりがあるーーその過程を描くことは僕らにとってすごく大事なことでもあった。これはシングルの寄せ集めじゃなくてアルバムなんだ。 このアルバムでは、ダンスフロアの物語を語っている。インタールードは物語のナレーションのようなもの。ダンスフロアって旅に似ているんだよ。ライブにやってきた君は、知らない人たちの空間に少し緊張して不安を抱く。でも、曲が始まるとその緊張は少しずつ解れていく。次の曲で君は楽しくなって、周りのムードに身を任せはじめる。最高の夜を経験した君は帰路につく……そういったことをアルバムという形で表現したいと思ったんだ。 ―全体を通して曲がスムーズに繋がっていることから僕は「DJの一夜のプレイ」を思い浮かべました。このようなアルバムの作り方について、インスピレーションになったDJやクラブはありますか? フェミ:ああ、もちろん! サウンドシステム「Channel One」のマイキー・ドレッドからはすごくインスピレーションを受けた。それからジャー・シャカ。彼はすばらしいDJだ。すばらしいDJって自然と踊らせるんだよ。あと、ジャイルス・ピーターソン。何がすごいって、彼はニーナ・シモンをかけた後にケンドリック・ラマーを持ってきたんだ。だけどみんな踊り続けていた……あれには驚いたな。ベンジー・Bやクエストラヴもお気に入り。彼らはサンバやファンク、サルサといったジャンルじゃなく、「音楽そのもの」をプレイできるDJ。ダンスや音楽の捉え方を再認識させてくれるよね。 ―紆余曲折の物語がありながらも、アルバム全体がすごく綺麗に繋がりを持って作られていると感じました。一曲一曲を並べたというよりは全体を考えて作られたと思いますが、どういったプロセスでこのアルバムは作られたんでしょうか? フェミ:うん……いうなら、すべての曲は材料。ライス、チキン、にんじん、胡椒……その材料を調理することが、僕らにとってアルバムを作るということ。そうだな……じゃあ、日本料理を例にとってみよう。 ―(笑)。 フェミ:僕はラーメンも寿司も大好きだけど、だからといって寿司をラーメンに入れたりしない。それと同じことで、材料を持ってさえいれば寿司にもラーメンにも応用できるし、とっておきのスペシャルな料理を生み出すことだってできる。一つ一つの曲は材料で、一つの料理、つまりアルバムというまとまりになってようやく魔法が宿る。だから、曲の順番を決めるのにはかなり時間をかけたし、この曲の次はこういう曲がくるべきだと思ったら、一旦空白にしておいて、当てはまる曲を後から作ったりもしてた。……そうだ、思い出した。「Ajala」と「The Traveller」のパートではDJみたいな感じを出したかったんだ。DJがムードの流れを操っていく、そのタイミングを楽しむように。イントロがあってエンディングがある。そこでは新たな旅へと進んでいくようなものにしたかった。 ―個々の曲について聞かせてください。「Intro」ではサン・ラの「Love in Outer Space」が聴こえるんですが……。 フェミ:『スター・ウォーズ』は観たことある? ―もちろん。 フェミ:『スター・ウォーズ』ってエンディングが次作の冒頭に繋がっているよね。それと同じように、『Chapter 7』のエンディングの「Colonial Mentality」は『Juan Pablo: The Philosopher』のイントロ。『Juan Pablo: The Philosopher』の終わりの「Space is the Place」は『You Can’t Steal My Joy』のイントロ。『You Can’t Steal My Joy』のエンディングの「Shakara」は『Where I’m Meant to Be』の頭の曲「Life Goes On」にサンプリングされていて、エンディングの「Love in Outer Space」が『Dance, No One’s Watching』のイントロにきている。 ―そんなふうに過去のアルバムを遡れる仕掛けがあったんですか。その構想は当初から考えていたんですか? フェミ:ああ、作品には繋がりを持たせたいと思ってた。作品は人生そのものだから、むしろ繋がっているのは自然なこと。ちなみにいつも、レコードの始まりと終わりはカバー曲にしてるんだ。それは、僕らは先人たちの音楽を再解釈してきたバンドだから。このアルバムを締めくくる「Everybody」は、ナイジェリアのバプテスト教会の曲をアレンジしたもの。そうやって僕らの作品は繋がり続けている。エズラ・コレクティヴのレコードが10、20、50、100……と増えていって、それら全部で一つのレコードになるんだ! それが僕らの夢だね。 ―今、思い出したんですけど、2018年のシングル「Samuel L Riddim」「Dark Side Riddim」のジャケットは、メンバーが『スター・ウォーズ』のコスプレをしているイラストでしたよね。そういうヒントもあったわけですか。 フェミ:ああ。あれはまたすぐにやらなきゃね。