ウーバー×マッチングアプリ…ウクライナが開発した「大砲のウーバー」がロシア軍を撃破した驚くべき仕組み――テクノロジーがもたらす新時代の戦争のカタチ
米英情報機関がウクライナをサポート
ウクライナはどのようにしてこのような目標情報を収集しているのでしょうか。2014年にロシアがクリミアを併合して以来、米国を中心とした西側諸国は、ウクライナ軍を欧米モデルの近代的な軍隊に変えるため、兵士の教育、訓練にあたってきました。そして、その訓練は戦術や兵器の運用にとどまらず、情報戦もカバーしていました。 米英は情報機関のスタッフをウクライナに派遣し、ウクライナ情報当局と協力関係を構築してきました。そして、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻後、米英のスタッフは、ウクライナ軍の参謀本部や情報局で西側諸国との連絡官として活動しているようです。具体的には、西側情報の提供、ロシア軍の通信の妨害・傍受、心理戦としての情報発信、ゼレンスキー大統領らの安全確保などについてのサポートを行なっているとされます。 そして、サポートのために必要な情報は、NATO軍や米軍の偵察機、AWACS(早期警戒管制機)がウクライナとの国境に近いポーランド上空や黒海上空の国際空域において常時飛行し、収集しています。また、黒海の国際水域においてもNATO軍の情報収集艦が展開し、常にロシア海軍の動向を探っています。 このようにして得られた情報がウクライナ国内にいる米英の連絡官にリアルタイムで送られ、連絡官は、これらの情報をウクライナ側に提供しているとされます。ただし、提供される情報は取捨選択されているようです。
ドローンなしでは戦えない現状
たとえば『ニューヨーク・タイムズ』によれば、2022年5月1日、ウクライナ政府高官らの話として、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長が先週、ウクライナ東部のイジュームを訪れ、戦線の視察や作戦の指導をしたとされ、米当局者もロシア軍の制服組トップが先週、前線のウクライナ東部を訪れていたことを確認したと明らかにしました。 イジュームは、東部での攻勢を強めるロシア軍が拠点としている街です。ウクライナ軍がロシア支配都市イジュームの第12学校にあるゲラシモフ将軍が訪問した陣地への攻撃を開始した時、ゲラシモフ将軍はすでにロシアへ向けて出発していた。それでも、少なくとも1人の将軍を含む約200人の兵士が死亡したとのことです。 おそらく米軍はゲラシモフの前線訪問を事前に察知していた可能性が高いと思われますが、結果から見て、その情報がタイムリーにウクライナに提供され ることはなかったということです。仮に、早い段階で提供してウクライナ軍が参謀総長を殺害しようとした場合、ロシアの報復攻撃が激化することや核の使用の懸念が考えられたからだと思われます。 このように選択的ではあるものの、NATO軍などから得た情報とウクライナ軍自らドローンや偵察部隊を運用して得た細部の情報をもとに目標情報を得ているようです。 少なくとも戦争初期の2022年5月の時点で、ウクライナ軍は偵察用のドローンを6000機以上運用しているとされます。その後も西側の支援によりその数は維持または増加しているはずです。ドローンは、衛星システムともリンクしていて画像や映像をアップロードできるとされています。