「アームレスリング」を通した青少年の立ち直り支援に誹謗中傷も… 不良の“たまり場”を「居場所」に変えた男の戦い
「あいつはAV男優だ」誹謗中傷で活動妨害も
小野本さんはSFD21JAPANを創設し、青少年の立ち直り支援を本格的に始めていった。しかし団体の発足から10年間は、苦難の連続だったという。 「活動に対して地域の方々から理解が得られず、叩かれ続けていました。当時は居場所づくりの民間団体はめずらしく、非行少年たちに対応するのは警察などの行政機関ばかり。あるとき地域の集まりに呼ばれて行くと、青少年育成に関わる行政機関の方々が僕を待っていたんです」 当時地域のPTA会長もしていた小野本さんは、「活動について褒められるのかなと、わくわくして行った」と語る。しかし待っていたのは、「あなたは何をやっているんですか? この街に“ゴミ”を集めないでください」という心無い言葉だった。 「当時西区では、九州大学の伊都キャンパス移転計画が進んでいました。それまで福岡市の各地に散らばっていたキャンパスを、西区に統合移転しようというものです。駅も新設され近くに大型の商業施設もできました。『この街はこれから良い街に変わるのに、不良を集めたら荒れる。ゴミの吹きだまりを作らないでほしい』と言われてしまったんです」 クチコミで広がった小野本さんのジムには、あちこちから家庭や学校に居場所のない少年少女たちが訪れるようになっていた。ジムで鍛えた若者たちの中には、格闘技大会で優勝する者も現れた。しかし「居場所づくり」という言葉がない時代、地域の人にとって小野本さんたちは「何をしているのかよく分からない」ものとして映っていたのだ。 「僕は大学を中退しているんですが、『大学中退のあなたに何ができるのか』『素行の悪い子どもがいるなら警察に通報するのがルールだ』『悪い男の子が警察に捕まれば、悪い女の子はよそに彼氏を作ってこの街を出ていく。それでいいんだから手を差し伸べるな』など、散々な言われようでした」 バッシングに負けず「地域や行政には限界がある。民間団体が必要だ」と立ち直り支援を続けた小野本さんだったが、「解散しろ」「この街から出ていけ」といった投書が自宅ポストに投げ込まれるようになる。さらには「小野本はアダルトビデオの男優をやっていた」など、いわれのない誹謗中傷を流された。