「身体も脳もピンピン」看護界のレジェンド・92歳の名誉教授が続ける「お年寄り」にならない養生術
年齢を気にせず夢を抱き続ける
川嶋さんは「年を重ねる=老い」とは考えていない。 「高齢になると『おばあちゃん』『おじいちゃん』と呼ばれる機会が出てきます。お孫さんに呼ばれるならうれしいでしょうが、『年寄り』であることを実感させやすい言葉ですよね。 実はそう呼ばれて急激に老けてしまう人もいます。年齢が上がれば衰えはあるけれど“老いる”わけじゃない。老いを認めると加速度的に老化が進むんです」 すべては心の持ちよう。川嶋さんは60代、70代はまだ少年・少女だと捉えている。 「若いか、年寄りかは自分自身が決めるんです。自ら老いてしまうのはもったいない。それに年齢は武器にもなります。私より年下の人は年齢を言うと、私に一目置いてくれるんです(笑)。今は率先して年齢を伝えています」 捉え方をポジティブにすれば見方が変わる。自分らしく生きていくため、パソコンやインターネットを活用したり工夫しながら働き続けていると話す。 今も看護の力をもっと活用し、患者にとって医療の現場をよりよくするため、さまざまな提言を続けている。 「人間には年代や経験に応じた役割がある。なかなか実現できなくても、『自分にできること』をこれからもあきらめないで挑戦します。やりたいことを続け、『あれもできた』『これもやった』とやり切って死にたいですから」
川嶋さんの元気のもと健康ルーティン4か条
(1)睡眠をしっかりとる 「22時にはベッドに入って、6時に起きる生活をしています。夫の介護をしていたころは、睡眠時間が3時間半。体重も今より20kgも増えてしまっていたんです」 (2)季節を意識した料理 「普通の暮らしの中で、私が気分転換としてやっているのが料理。梅干しを漬けたり、あんずジャムを作ったり。山椒の芽の佃煮やきゃらぶきといった、庭のものを使った料理をしています。わざわざ「今日は○○を作ろう!」と気負うのではなく、何かの合間にやるのがポイントです」 (3)清潔にする 「お風呂には毎日入っています。身体を清潔にすること、住環境を清潔にすること、排便・排尿をきちんとすること……そんな基本的な生活習慣を大切にしています」 (4)昔ながらの家庭療法で病気を防ぐ 「私は一年中、塩水で鼻うがいをして、少しおなかが緩いときは梅肉エキスで治します。便秘や下痢のときには熱湯に浸したタオルを腰の中心に当てると効果がありますよ。もともと、看護は家庭のもの。昔ながらの家庭療法も役に立つんですよ」 お話を伺ったのは……川嶋みどりさん●1931年生まれの看護師。現在は健和会臨床看護学研究所所長、日本赤十字看護大学名誉教授を務める。2007年に看護師に与えられる世界最高の栄誉といわれるフローレンス・ナイチンゲール記章を受章。著書も多数。 取材・文/後藤るつ子