池上季実子、厳しかった父に黙って女優デビュー。大ブレイクした『愛と誠』決定後には初めての反抗「私はこれをやるの!やりたいの!」
「健さんの手は大きくてあったかくて」
『純愛山河 愛と誠』の放送が始まると大人気となり、1クール(3カ月)の放送予定だったのが、さらにもう1クール延長された。池上さんは若手トップ女優として注目を集め、次々と出演作が続いていく。 1977年、大林宣彦監督の劇場用映画監督デビュー作『HOUSE』で映画初主演。ヌードシーンにもチャレンジした。 ――「今までのイメージを変えたかった」と言ってヌードに、すごく度胸のいい方だなと思いました。 「そう言うしかないですよね。『ヌードになる必要があるのかな?』って思っていたから(笑)」 その翌年には『熱中時代』(日本テレビ系)に出演。北海道から東京の小学校に赴任した北野広大(水谷豊)の妹・青空役を演じた。 「青空は女優を目指して上京するという設定でしたけど、水谷さんとは本番以外でも『お兄ちゃん』、『青空』って呼び合っていて、本当の兄妹のようでした。あのドラマでは、水谷さんの語尾を延ばす独特の口調が人気になりましたよね。 あれは、初日に北海道ロケに行って水谷さんと二人で出番を待っているときに、『北海道の人ってこういうしゃべり方なんだよ。こういうしゃべり方にしたいな』って言ったら水谷さんが『いいなあ、それ』って言って、語尾を延ばすしゃべり方になったんです。だから、専門家に方言指導を受けたわけじゃなくてオリジナルの方言でしたけど、とても楽しかったですね。 15年くらい前だったかな。当時のマネジャーと六本木のミッドタウンにある喫茶店で打ち合わせをしていたときに、隣のテーブルに座ってチラチラ見ている男の人がいたんです。結構重要な話をしていたからイヤだなあって思って見たらなんと水谷さんでした。 『お兄ちゃん』って言ったら『青空、ようやく気づいたか』って(笑)。そういう気さくな方なんですよね、水谷さんは。二人で大笑いしました」 同年、高倉健さん主演映画『冬の華』(降旗康男監督)に出演。健さん演じる主人公・加納秀次は関東のヤクザ組織の幹部。自分が殺した相手の娘(池上季実子)に伯父だと身分を偽り、彼女の成長見守っていたが、再び義理によって人を殺すことに…という展開。この作品で池上さんは、熊本映画祭の日本映画女優賞を受賞した。 「健さんがいらっしゃるときはみんなすごいんですよ。ビシッと直立、完全にリスペクトしていて。私は16、7でヤクザ映画も知らなかったけど、『この方はすごい方なんだ』ということはわかりました。 最初に会ったとき、健さんは椅子に座っていらしたのだけれど、パッと立ち上がって『高倉です、よろしく』って、私みたいな小娘にご挨拶してくださって。本当にすごい方だなと思いました。 あと、健さんの手がいい意味でシワがあって分厚くて、私は好きでした。『健さんの手は大きくてあったかくてステキですね』って言ったことがあります。健さんは笑ってらしたけど」