W杯で復活を果たしたオランダ その背景とは
この選手選考ポリシーはファン・ペルシにだけ例外が認められた。シーズン終盤戦をけがで棒に振ったファン・ペルシは、今年に入ってからマンチェスター・ユナイテッドでたった5試合しかフル出場を果たしていなかった。ワールドカップ前の代表合宿でファン・ハール監督は、ファン・ペルシを90分間戦える状態に戻す事に目標を置いたが、ひざやそけい部の違和感や痛みは消える事が無く叶わなかった。スペイン戦のワンダーゴールでも証明されたように、ファン・ペルシの技量はずば抜けているが、それも身体が動けるうちだけ。メキシコ戦では0-1と負けていながら、指揮官は躊躇無く75分でファン・ペルシを下げ、代わりに入ったフンテラールが1ゴール1アシストの大活躍で逆転勝利に貢献した。 選手選考に始まり起用まで、コンディション重視のチーム作りをしているから、今大会のオランダは後半に強い。今大会4試合のうち、スペイン戦(5-1)、オーストラリア戦(3-2)、メキシコ戦(2-1)と実に3試合も逆転勝利を演じている。ファン・ハール監督はメキシコ戦後、「素晴らしいチームスピリッツ。チームの雰囲気は最高だ」とまくしたてた。 「管理型指導者」のイメージが強すぎるため、日本に住んでいる方にはなかなか分かってもらえないかもしれないが、ファン・ハール監督は、いかに選手をポジティブな気持ちにさせ、ピッチの上で最高のパフォーマンスを発揮させるか、そこに気を配っている指導者である。今回のオランダで言えば、そのプロセスは監督就任初采配となった2012年8月のベルギー戦で始まっている。この試合は2-4で敗れたものの、3日間の合宿中にグループミーティングの機会を作って、ユーロ2012の時に生まれたチームの不満を取り除くことに務めた。 スペイン戦前の大事な日にも、ファン・ハール監督はレギュラー陣の練習をコーチたちに任せ、自らは控え組の練習をチェックした。今回のオランダは勝っているからチームの雰囲気が良いのではなく、大会前からずっと「前回のワールドカップやユーロの時より雰囲気が良い」と言われていた。その背景には、若い選手が素直な事や、ベテラン選手の自覚もあるだろうが、ファン・ハール監督のマネージメントの積み重ねもあったのだ。