<フィギュアスケート>「皇帝」プルシェンコは日本男子の敵ではない?
3大会連続でメダルを獲得しているロシアのレジェンドスケーター、エフゲニー・プルシェンコが、ソチ五輪の代表に選ばれたが、果たして、日本の羽生結玄、高橋大輔、町田樹のメダル獲得の行く手を阻むライバルになるのだろうか?日本選手権2位で、現在、インストラクター及び評論活動をしている中庭健介氏は、こんな見方をしている。 小塚崇彦か高橋大輔か ソチ五輪代表を巡って起きた議論 ■金メダル争いには絡んでこない 「プルシェンコファンの方々には怒られるかもしれませんが、ロシア選手権の演技を見る限り金メダル争いのライバルではないと見ています。ただ、銅を含むメダル争いに絡んでくる可能性はゼロではありません。SPでは、間違いなく90点台を出してくる力はあるでしょう。ただ、全盛期に比べると、いくつもの問題を抱えています」 プルシェンコは、今季、椎間板ヘルニアの手術をした影響で主な国際大会には、ほとんど出場できなかった。ロシアの国内五輪選考会となったロシア選手権では、SPで98.41の高得点を叩きだしたが、フリーのジャンプで失敗して2位に終わっていた。ロシアには五輪出場枠が「1」しかなく、優勝した18歳のマキシム・コフゥトンに代表の座を「譲る」という発言までして、次の欧州選手権は欠場していた。だが、その欧州選手権で、期待の新星が5位と惨敗したことで、ロシアのスケート連盟は慌てた。プルシェンコに再度、非公開の選考テストをさせて逆転、代表に選んだのである。 ■プルシェンコの問題点とは もう31歳。フィギュア界では大ベテランだ。膝、腰に故障を持っている影響と、練習不足からか、スピードやスケーティングのキレが落ちていることは否定できない。では、プロが見るプルシェンコの“いくつもの問題点”とはどこなのか。 「私は“古い”と感じました。昔は、4回転を跳べば勝てるという時代でしたが、今は、技術だけでは勝てません。プログラムをひとつの作品として魅せる表現力が重要なのです。例えば、スピンにしても、音に合わせるなど、今は技術に芸術性とオリジナリティを加えていくことが世界のトップの流れで、日本の3人はもとより、パトリック・チャン(カナダ)、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)という選手は、そういう表現力をつけています。けれど、プルシェンコのスピンは、技術的に『レベル4』を保つことが精一杯のものでした。ステップシークエンスにしても、深いエッジで、長く滑るなどの工夫が必要ですが、プルシェンコのそれには、そういう工夫が見られませんでした。ジャンプの入りについてもそうです。そのあたりの細かい表現力、芸術性が、今のプルシェンコには欠けています。技術点だけを取りにいっているように見受けられます。ショートでは上位にくるかもしれませんが、フリーでは厳しいでしょう。故障を抱えていますから体力的に最後までこなせるのか、という不安もあります」 中庭氏は、具体的にプルシェンコの死角を指摘をした。