台湾・香港で大人気…1300万人が利用する「観光情報サイト」 日本のソフト・パワーをどう高めるか…起業家が語る信念
ビジネスで解決できる課題がある
―世の中のビジネスは何らかの課題を解決するためにあります。起業した際の課題感は何でしたか まず、日本と台湾の間には国交がないということです。台湾の大使館は日本にはないし、逆もまた然りです。そのために、普通の国ならできる政治的なやり取りができません。今、東アジアにおいて日本と台湾の関係は非常に大事ですが、政治家ができることは限られている。だったら、もう民間でやるしかないという課題感がありました。 また、起業して3年後ぐらいに実感したのは、衰退する日本の地方への課題感でした。都市圏にお住まいの方が想像する以上に地方経済は疲弊しています。ですが、台湾人に人気なのは日本の田舎です。多くの台湾人はすでに東京に行ったことがあるし、京都は観光客で混雑している。実際にデータを見ると東北を訪れる訪日外国人客の50%程度が台湾人です。 東北地方に台湾人が訪れ、そこでたくさんの買い物をし、地元の特産品を食べ、旅館に泊まり、東北を好きになってくれたら台湾に帰った後も東北の特産品を買ってくれる。そんな循環が生まれれば日本のさまざまな地域の活性化にも貢献することができます。 ―起業3年目に地方への課題感に気付かれたとのことですが、何があったのでしょうか 2012年に日本と台湾の間で「オープンスカイ協定」が締結されました。つまり、日台間で航空便数や運賃、乗り入れ企業の自由化が進み、人や物の流通が促進されるようになりました。 そこからLCCが開通し、地方都市への乗り入れも多くなりました。創業当時は1年で80万人程度の訪日台湾人が、今や約500万人になっています。だから台湾人が日本全国に関心を持つようになり、東京や京都だけではなく地方にも訪れるようになったのが、創業後3年目の変化でした。 ―今後解決したい課題はあるのでしょうか 日本のソフト・パワーが韓国に負けかけているなと感じています。日本の皆さんは台湾と聞くと「台湾って親日ですよね」とおっしゃいます。それは間違っていないのですが、台湾の10代、20代に関しては韓国の方が好きなんです。みんな、韓国ドラマ、コスメ、ファッション、音楽に夢中。ですから、もうあと10年、20年したら台湾はおそらく親韓になってしまいます。それはもちろんいいのですが、どんどん日本の存在感が薄まってきているのを感じます。我々のメディアを通じて、日本にもっと関心を向けてもらいたいなと思いますね。 ―2023年3月には書籍も出版してさらに魅力を発信されていますが、次は歌を出されるそうですね まさにいま、プランニングを進めていますが、台湾の女優さんを起用したミュージックビデオの制作を進めています。実は多くの台湾人YouTuberが日本各地を紹介する動画を上げることで、飽和状態になってきていて私たちの動画も再生数が伸び悩んでいます。また、一部の人々が、本来は撮影許可が必要な場所でも、許可を取らずに勝手にアップロードしてしまうということもあります。そこで、私たちは台湾でも知名度の高い方を起用しつつ、日本の魅力が伝わる耳に残るフレーズの曲をつくり、きちんと撮影許可を取った高品質なミュージックビデオをリリースすることで再生数を伸ばしていきたいと思っています。 ―ほかにはどんな挑戦を考えていますか 台湾の方向けに、北海道の食材を使ったスイーツを作っています。北海道には毎月、ラジオ収録に行っていますが、行くたびに知らなかった現地のおいしい食材を見つけることができます。こんなにおいしいものがあり、素敵な生産者さんがいる。そういったことは現地に足を運ばなければ分からないことですが、こうした発見を台湾はもちろん、将来的にはアジア全域に発信していきたいですね。 ―「日本のために」という強い思いが軸としてあるのですね しかし、忘れてはならないのが、我々は事業会社であること。「日本のために」と思ってやるのは簡単ですが、そこに利益がついてこなかったらただの絵空事であって、継続性がありません。しっかり利益を上げることに一番心を砕いているところです。 また、「日本だけ」ではなくて、日本と台湾、両方の健全な発展に事業を通じて貢献したいという思いでいます。