庁舎建て替えの熊本市役所の次の姿は 熊本市議の神奈川・川崎市役所の視察に密着『にぎわい』や『防災』の拠点 約616億円の費用や市民への説明はどうなる
庁舎建て替えへの市民との合意形成は
川崎市本庁舎はなぜ、建て替えとなったのだろうか。また、その際、市民から異論が出ることはなかったのだろうか。 川崎市・庁舎管理課の市川浩章課長は「東日本大震災の直後で、いろんな自治体が庁舎機能が止まって災害対策活動が行われなかったという事例があったし、実際本庁舎も当時70年以上たっていて、かなり耐震性が低いという事実があったので、『大きな建て替え自体をしない方がいいんじゃないか』という意見はあまりなかったと思う」と話す。 次に熊本市の議員たちが視察したのは川崎市議会の議場だ。この天井は『膜天井』と呼ばれている。万が一、天井が落下するような大地震が起きたとしても、まるで布がフワリと落ちるような軽い素材ということだ。 職員の執務室は広い空間で、大きな揺れが起きても落下被害を防ぐためあえて天井板を省いて構造がむき出しの天井となっている。 庁舎整備に当たって、川崎市は建て替えるかどうかを決める段階から、市民ら第三者による委員会を作り、意見を聴いたという。 市川課長は「公募で入っていた市民とか町内会の代表であるとか、商工会議所の代表などに入ってもらい議論をしてもらい、本庁舎を建て替えるということを基本構想の中で決めた。建て替えが決まった後に基本計画を作ったが、そこでも同じように公募した市民や町内会代表などが入った委員会を立ち上げ、設計を発注するに当たっての大きな考え方というのはそういう中でまとめた」と話す。
視察した熊本市議たちにはどう映った
川崎市本庁舎は、元の庁舎と同じ場所に建て替えられている。総事業費は約470億円。(熊本市庁舎の概算事業費は約616億円) 熊本市議会庁舎整備に関する特別委員会の西岡誠也委員(市民連合)は「(川崎市本庁舎は)金額が2020年の契約だからかなり安かったと思う。(今は当時より)人件費、材料代が上がっているはず」と話す。 同じく特別委員会の坂田誠二委員長(自民党)は「(川崎市本庁舎は)建物の割には低価でどういう工夫をされているか、その辺は今からいろいろ考えて、市民の皆さん方もいろいろな形で理解を得られるような庁舎を造っていくことが大事なんでしょうね」と述べた。 一方で、熊本市庁舎関連予算の議決で反対し、会派を離脱した髙本一臣委員(創生熊本)は「各自治体の実態に合った庁舎をしっかりと考えていかないといけないでしょうね。そこに市民の合意形成が必要不可欠と改めて思いました」と話す。 熊本市は、これから行う新庁舎の基本設計、実施設計の業務について業者に一括発注する方針で2024年度中の契約を目指している。この契約をもって、合併推進債の活用が可能となる見通しだ。
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