年末ジャンボ宝くじの購入で迷う「ミニ」との買い分け、「現代ポートフォリオ理論」に当てはめて導き出した結果は?
■ リスクとリターンのバランスが最も効率的なポートフォリオとは? 次に、このグラフで曲線に原点から接線を引いてみる。青い線がそれにあたる。この青い線は「資本市場線」といわれるもので、安全資産が存在するときの「効率的フロンティア」とされる。 そのココロについて、簡単に説明しよう。まず、原点はリスクもリターンもゼロ、すなわち宝くじを買わない場合に相当する。この原点から曲線の方向に向けて進む、つまり宝くじを買ってリスクとリターンをとる方向に踏み出すわけだ。 ここで、原点から曲線に向けて接線を引くことは、「曲線上の点のうち、できるだけ左上の方を目指すとしたらどこがそれに該当するか」を考えていることになる。 青色の点は接点で、「接点ポートフォリオ」と言われる。この後に出てくる安全資産への投資を考えずに、年末ジャンボと年末ジャンボミニだけでポートフォリオを組んだ場合、リスクとリターンのバランスが最も効率的なポートフォリオとなる。 ざっくり計算したところ、この点はr=0.48に相当していた。これは年末ジャンボと年末ジャンボミニの配分割合を48%と52%の割合で買えば、リスクに対するリターンの比率が最も高くなる、すなわち最も効率のよいポートフォリオ(=効率的なポートフォリオ)になることを意味している。 この接点ポートフォリオの場合、リターンは5億600万円となる。
■ 「安全資産」も加味した上での効率的なポートフォリオとは? ただし、効率的なポートフォリオは、接点ポートフォリオだけに限らない。 青い線は安全資産が存在するときの効率的フロンティアであり、この青線上でポートフォリオを組成すれば、いずれも効率的なポートフォリオとなる。安全資産とは、その名前の通りリスクのない安全な資産のことだ。本稿の場合は、宝くじを買わずに残しておくお金を指すものとする。 そこで、例えば10万円のお金を持っていた場合、6万円をくじの購入に充てることにして、2万8800円分の年末ジャンボ(くじ96枚)、3万1200円分の年末ジャンボミニ(くじ104枚)を買う(48%と52%の割合)。そして残り4万円はくじを買わずに残しておく、といったことが考えられる。このお金の配分法に相当するポートフォリオは、図では緑色の点となる。 緑色の点は、青線上にあるが、オレンジ色の曲線からは左上側に離れている。これは、曲線上で同じリスクのポートフォリオを組む場合と比べると、より高いリターンが得られることを意味している。 このように、宝くじを買わずにお金を残しておくこと(原点)と、接点ポートフォリオ(青色の点)の間で、効率的なポートフォリオを作ることができるわけだ。 くじを総額でいくら買うか、またはいくら残しておくかは、「どれだけリスクをとるか」ということなので、買う人のリスク選好次第となる。 以上、現代ポートフォリオ理論に類似した考え方を用いて、2つの宝くじからなるポートフォリオを組成してみた。 リターンやリスクの設定については、本稿で用いたものは1つの例に過ぎない。本稿とは違う考え方もいろいろあり得るだろう。さまざまな考え方に従って、ポートフォリオを考えてみるのも面白いかもしれない。 そもそも宝くじの買い方は人それぞれで、これが正解といえるものはない。いろいろ考えてくじを買うところから、すでに宝くじの楽しさは始まっていると言えるだろう。 【参考資料】 「宝くじ公式サイト」(全国都道府県及び全指定都市) 『証券投資論 第3版』(日本証券アナリスト協会編、榊原茂樹・青山護・浅野幸弘著/日本経済新聞社)
篠原 拓也