年末ジャンボ宝くじの購入で迷う「ミニ」との買い分け、「現代ポートフォリオ理論」に当てはめて導き出した結果は?
■ 年末ジャンボの「リターン」と「リスク」についての考え方 現代ポートフォリオ理論は、ポートフォリオのリスクとリターンの関係を明らかにするものだ。通常は、縦軸にリターンとしてポートフォリオの期待収益率、横軸にリスクとして収益率の標準偏差(統計における指標の一つで、データ群のばらつき具合を表す値)が用いられる。 だが、宝くじの場合、平均的には買うと損をするものであり、期待収益率はマイナス50%程度となる。これをそのまま理論に当てはめても、結果の解釈は困難と考えられる。そこで、リスクとリターンの考え方について何か工夫をする必要がある。 まず、リターンについて。宝くじのリターンとは何か、一言でいえば1等と前後賞の合計の当せん金額と言っていいだろう。そこで、年末ジャンボは10億円、年末ジャンボミニは5000万円とする。 次にリスクについて。これはリターンに対応して、1等と前後賞の標準偏差、つまり1等と前後賞の当せん金を受け取る場合のブレをリスクとみなすことにする。 具体的には、くじ1枚に対して、1等の賞金を前後賞の分も合わせて、年末ジャンボは10億円、年末ジャンボミニは5000万円とみなし、2等以下(1等の組違い賞を含む)の当せん金はすべてゼロとしたうえで、その標準偏差を計算してこれをリスクとする。 実際には、くじを連番で3枚買う場合、1等の前後賞だけが当せんするといったことも起こり得るが、今回は話を簡単にするために、そうした一部分だけの当せんは考慮しない。 このように、リターンとリスクを設定した上で、話を進めていく。
■ リスクを最小にしたい場合のジャンボ、ジャンボミニの「配分割合」 リターンとリスクを設定した上で、それらを図の中でグラフに表していくと以下のようになる。横軸にリスク、縦軸にリターンをとっている。右に行くほどリスクが増大し、上に行くほどリターンが増えることになる。 大抵の人は「リスクはできるだけ小さく抑えつつ、リターンはできるだけ大きくしたい(ローリスク・ハイリターン)」と考えるだろう。この図でいうと、左上の方を目指すことになる。 だが、現実はそう甘くはない。リスクを小さくしたければリターンも小さくなってしまう。リスクを大きくとらないと、大きなリターンは得られない。まさに、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」ということわざそのものだ。 図で言えば、ローリスク・ローリターンならば左下、ハイリスク・ハイリターンならば右上の方にいく。左上の方にはなかなかいくことができない。 そこで、2つの宝くじをある比率で購入するポートフォリオで、リスクとリターンの関係がどうなるかを図に表してみて、その中からできるだけ左上の方のポートフォリオを選ぶ──これが、現代ポートフォリオ理論の考え方をもとにした、今回の宝くじ購入の配分法の核心部分だ。 次の図では、まず右上の端点に年末ジャンボ、左下の端点に年末ジャンボミニがくる。そして、2つの宝くじへの配分割合〈年末ジャンボにr、年末ジャンボミニに(1-r)(0≦r≦1)配分〉をいろいろ変えていった場合のポートフォリオの点がその間に並ぶ。それらを表したものが、オレンジ色の曲線のグラフだ。なお2つの宝くじは独立に行われるとして、相関関係はないもの(相関係数はゼロ)と想定している。 年末ジャンボだけを購入した場合が赤い点、年末ジャンボミニだけを購入した場合がピンク色の点に相当する。 年末ジャンボのリスクは22万3607円、リターンは10億円。一方、年末ジャンボミニのリスクは5万円、リターンは5000万円だ。これらの金額は、図の中では(22万3607円、10億円)とか、(5万円、5000万円)といった感じで、中学校の数学で習う座標平面の(x座標、y座標)のように表示している。 茶色の点は、r=0.05の場合で、リスクを最小にしたもの、つまり1等と前後賞の当せん金の受取額のブレを最小にしたものだ。投資理論では「最小分散ポートフォリオ」と呼ばれる。 これは、あるお金を全て使って2つの宝くじを買う場合に、とにかくリスクをできるだけ減らしたいという場合の買い方だ。「最小分散」のときには標準偏差が最小となり、リスクが最も小さくなる。 つまり、リスクを最小にしたいのならば、年末ジャンボと年末ジャンボミニの配分割合を5%と95%の割合で買えばよいという結果になる。 この場合、リターン、つまり1等前後賞合わせての当せん金は9750万円となる。リスクの大きい年末ジャンボには5%しかお金を投入しないため、1等前後賞のリターンは9750万円にとどまることとなる。まさに、ローリスク・ローリターンとなっている。ただし、冷静に見れば、9750万円のリターンでも十分に大きな金額だ。