取手市「中3いじめ自殺」10年目の真実に迫る なぜ調査報告書はでっちあげられたのか
文科省からの圧力
だが両親はこうした事実から、娘の自殺はいじめ防止対策推進法が規定する「いじめによる重大事態」に当たると主張した。しかし取手市教育委員会は、これらの軽微ないじめが自殺につながったとは判断できないとして、「いじめによる重大事態」に指定しなかった。 両親はこの教育委員会の判断に怒り、2017年5月、文部科学省を訪れ抗議。これを受け文科省は、取手市教育委員会に対し、いじめによる重大事態として認識すること、ご遺族に寄り添うように努めることなどを助言したのだった。 このため市教委は先の判断を撤回、「いじめはありました」と両親に謝罪した。さらに、市が設置した最初の調査委員会を解散し、同年12月に県知事のもとに新たな調査委員会が設置された。その委員の人選などは両親の希望を入れて調査を開始し、2019年3月に報告書を公表したのである。 同報告書の中核は次の部分である。 「本事案は、担任教諭の学級運営や指導等の言動が、クラス内の生徒の関係性に変化をもたらし、本件生徒に対するいじめを誘発し、助長した、という点に大きな特徴がある」
学校は休めないと思い込ませた可能性が
具体的に何が書かれていたのか。一例を挙げると、美恵子さんは東京の音楽科のある私立高校を第1志望としていた。ところがその場合は県立高校は併願できないと教諭が指導したというのだ。 「学校の取扱いとは異なった誤った指導であった。私立高校の一校受験でよいかどうかは『今後の生活態度を見て決める』と言ったことにより、本件生徒と母親は、2学期は学校を休むことができないと考えるに至った。(中略)いじめに苦しむ本件生徒をして絶対に学校は休めないと思い込ませた可能性があり、担任教諭の言動によって本件生徒が心理的負担を感じた可能性を否定できない」(報告書概要版) これに対して教諭は、県立高校は併願できないと言った事実はなく、「今後の生活態度を見て決める」と言ったこともない。当時いじめで苦しんでいたとは全く思っていなかったと、調査委員会の聴取の際に強く否定していた。だが報告書はこれを事実としている。