秋芳洞の「未公開エリア」ツアー、くさびを使って地下深くへ…水が岩に当たると反響し人が話しているよう
山口県美祢市の中部から東部にかけて広がる日本最大級のカルスト台地・秋吉台は2025年、国定公園に指定されて70年の節目を迎える。市全域が対象の「Mine秋吉台ジオパーク」は、人類の誕生よりもはるか昔、3億5000万年前から続く地球と生命の「記憶」だ。26年春の国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)世界ジオパーク認定を目指して奮闘する地元住民らのラストスパートの年が幕を開ける。 【写真】カラフルにライトアップされた秋芳洞(2024年2月)
3億5000万年前のサンゴの化石探し・洞内で「最も白い」鍾乳石も
「洞内を勢いよく流れる川の水は岩に当たると反響して、まるで人が話しているように聞こえてくるんです」。国内最大級の鍾乳洞・秋芳洞を案内する美祢市の地域おこし協力隊員定野愛美さん(31)は、洞内の未公開エリアでしかできない体験の魅力をそう語る。
北九州市出身の定野さんが野外活動に親しむようになったのは小学生の頃。悩まされていたアトピー性皮膚炎が治った5年生の時、北九州の山中を5日間かけて100キロ歩くイベントに参加した。きつかったが「自然の中にいることが気持ち良く、アウトドアにひかれていった」。
地元の中学、高校を経て大学に進み、探検部に入部した。各地の山や川を巡るようになり、中でも心を奪われたのが洞窟だった。
初めて入ったのは岡山県のカルスト台地・阿哲台にある洞窟だった。両壁に腕を突っ張りながら登り、はしごを使って洞内を進んだ。道なき道の先には滝のような沢があり、「この景色を見たことがある人はどれだけいるのだろう」と、これまでにない高揚感に浸ることができた。
大学時代は洞窟の調査にも積極的に参加。秋芳洞など国内を始め、大学4年生の時にはインドネシア・スンバ島の人がほぼ踏み入れていない洞窟約40か所にも入った。「行ったことのない洞窟は、外観だけではどのように延びているのかわからず、想定を裏切られる。だから面白い」。ますます洞窟にのめり込んだ。
美祢市の地域おこし協力隊「美祢魅力発掘隊」を知ったのはワーキングホリデーで滞在していたスペインだった。市の臨時職員で洞窟仲間の男性から、秋芳洞の未公開エリアのケービングガイドを募集していることを教えてもらった。「大好きな洞窟関係の仕事に就ける」と応募し、昨年10月に着任。真っ先に足を運んだ秋芳洞で「洞窟は形を覚えると思い出より小さく見えるものだが、秋芳洞の広大さは初めと変わらなかった」と、改めてそのスケールに圧倒された。