「天皇学」は皇室制度を考える手掛かり 歴史や文化を知れば日本の国柄が分かる
皇室制度史を長年研究する京都産業大名誉教授の所功さん(82)が「天皇学」を提唱している。 天皇について学ぶことで、日本の国柄を探る道筋だ。議論が進まない皇室制度の改正を考える手掛かりにもなるという。(共同通信=新堀浩朗) 「天皇に代表される皇室の在り方は、私たち一般国民の社会と重なっています。天皇、皇族のなさっていること、皇居内外の有形無形の文化を知れば、日本の国民、社会の本来的・理想的なありようを考えることができます」と所さんは言う。 そのため、まず歴史を知るきっかけにしてもらおうと、歴代天皇の主要な事跡を読みやすくまとめ、最新の研究も紹介する一般向けの著書「『天皇学』入門ゼミナール」をこのほど出版した。講演や自らのホームページでも解説している。 日本の法制文化史を長く研究し、政府の有識者会議に度々呼ばれている所さんは「皇室制度の検討にも天皇学が不可欠」と話す。 「6世紀末、推古天皇という東アジアで初めての女帝が立てられました。その頃から、男尊が強い中国の影響を受けた律令が整備され始めましたが、8世紀初めに完成した日本の律令は、女帝を公認し、その子の存在も容認しています」
現在の皇室では、女性の皇族が担う活動の比重が高まっている。 「天皇陛下の長女愛子さまは、今春から日本赤十字社に勤めながら単独で公務に当たられ、秋篠宮家の次女佳子さまも幅広く活動しておられる。先頃亡くなられた三笠宮妃の百合子さまの孫に当たる彬子さまは、日本文化、宮廷文化の継承に尽力されています」 だが、このままでは危機的な状況になるという。 「現行制度では、皇族女子は結婚すれば皇室を離れなければならないので、近い将来、皇室は悠仁さま一人ということになりかねません」 皇位継承制度の検討では意見の対立が続く。 「明治維新や昭和の敗戦で憲法や制度は変わりましたが、国家と国民の安全と安心を祈る天皇の本質は一貫しています。皇室は、その時々の制度とは次元を異にする格別な存在です。皇室の永続には、歴史と現実を直視して、その担い手である皇族が男女を問わず実在できるよう工夫することが大切だと思います」