【#みんなのギモン】「嫌な顔された」「舌打ちされた」 なぜエスカレーターは歩いちゃいけない? これだけの理由
■視覚障害がある男性「足音で、命綱となる“声”が聞こえない」
この“片側空け”によって、エスカレーターの利用に支障をきたす方もいます。 兵庫県に住む、油谷英俊さん(60代)。全盲で、光はかすかに見える程度だといいます。油谷さんは通院のために、駅のエスカレーターを利用する際、ガイドヘルパー(移動の介助)の付き添いがなければ乗れないといいます。 視覚障害がある油谷さん 「兵庫県では、エスカレーターは右側に立って乗ります。左側は空いていますが、横にガイドヘルパーさんと並んでしまうと塞いでしまうので、社会の暗黙のルールを気にしてしまい、ガイドヘルパーさんと上下に並んで乗っています」 ガイドヘルパーの声を頼りにエスカレーターを利用するという油谷さん。困っているのは、歩行者の“足音”です。 「ガイドヘルパーさんは危険を回避するために、私に『エスカレーターが終わります』などと声をかけてくれるのですが、サラリーマンの革靴の音がガタガタと大きな音をたてて歩くので、ガイドヘルパーさんの声がけが聞こえにくい。“声”は私にとって命綱なんですが聞こえなくなるんです。全ての情報がガイドさんから入りますので、声が聞こえないことは致命傷です」 危険は、歩行者の足音以外にも潜んでいるといいます。 「乗るときは右手で手すりにつかまり、左手は杖を持ってます。本来、杖は軽く持って段差などの情報は手の平で感覚を確認するのですが、ある日、左側から歩く人がいて“杖を蹴られてしまった”ことがあります」 歩行によって妨げられる“聴覚と触覚”からの情報。 さらに… 「片側が空いていたのでガイドヘルパーさんと並んで乗っていたら、下から駆け上がってきた人に“舌打ち”をされました」 左右問わず、立ち止まって乗れるようになってほしいと願う油谷さん。 歩く人がいる現状について望むことは… 「視覚に障害がある立場からすると、ガイドの声が聞こえにくいことや、歩行者との接触は危険なので歩かないでほしい。 安心して並んで乗りたいので、片側を空けるという暗黙のルールがなくなってほしいですね」 エスカレーターを歩くことの問題は様々ありますが、ひとつひとつが切実です。記者もエスカレーターに乗る際、あらためて思い返したいと思います。