アベノミクスで金利上昇なぜ?/木暮太一のやさしいニュース解説
アベノミクスのせいで国債を買わない投資家
何らかの理由で国債が値下がりしたとします。 さっきの図を見てください。国債の現在の値段が安いと、「期日」との差が大きくなっています。これは国債の利回りが高くなるということです。すると、投資家は、「Aさんに貸すより国債に投資した方が儲かるなぁ」と考えます。Aさんがお金を貸してもらうためには、少なくとも国債と同程度の金利を設定しなければいけません。 ―――「だから国債が値下がりすると金利が上がるのか……」 「国債の人気がなくなる→国債の値段が下がる→金利が上がる」ということなのです。 そして、アベノミクスの金融緩和のせいで、投資家が国債を買わなくなっています。 ―――「どういうこと??」 日銀は、「金融緩和」をするために、月々の国債新規発行額の大部分(7割)を買おうとしています。しかしその結果、市場に流通する国債が大幅に減ったのです。これは投資家にとっては、あまり良くないことなのです。 ―――「なんで?」 値段が乱高下するからです。数が少ないと、一部の大口取引の影響を受けて、値段がすぐに変わってしまう可能性があります。 もともと国債は「安全な投資先」だから選ばれています。でも値段が乱高下してしまうと、「買ったとたん値段が下がったら嫌だな」と思われ、敬遠されるのです。投資家が「国債を買うのをやめよう」と考えたわけです。その結果、国債の人気が下がり、その分、金利が上がったのです。 まだまだ、異常な低金利が続いています。しかしここ最近は、これまた「異常なスピード」で金利が上昇しかけています。国民が低金利の恩恵を受けられるのも、「今だけ」かもしれませんね。 ------------------------ 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書35冊、累計80万部。