やけ食いの代償...超加工食品がもたらす鬱病リスク
加工度の低い食品を選ぶべき理由
ストレス発散のために こうした発見は、加工度が最小限の食品が実際に鬱病のリスクを低下させるという先行研究の結果を補完する。「野菜、果物、ナッツ類、シード類、豆類などが豊富な地中海式食生活は鬱病のリスクを下げることが分かっている」と、英アストンメディカルスクールのドゥエイン・メラー上級講師(エビデンスに基づく医療・栄養学)は言う。 イギリス在住の双子の姉妹エイミー・キングストンとナンシーは昨年、英キングス・カレッジ・ロンドンの実験に参加。2週間にわたって、カロリーは同じだがエイミーはUPFだけの食事を、ナンシーはUPFを一切含まない食事を続けた結果、エイミーのほうが空腹感・疲労感がはるかに強く、体重も増えた。 一部の専門家は、UPFと鬱病の相関関係は、鬱病患者が人工甘味料入り飲料などのUPFを好むせいではないかと示唆している。 「こうした飲料が鬱病のリスクを上昇させる可能性はあるが、逆に鬱病のせいで甘味料入りの飲料を好むようになる可能性のほうが高い。従って、これらの食品が気分の落ち込みや精神的不調のリスクを増すのか、それとも精神的不調が食品の選択に影響するのかは不明だ」とメラーは言う。 一方、チャンは次のように主張する。「私たちは対象者の食生活を鬱病発症の何年も前から追跡調査しているので、鬱病のせいで超加工食品を口にした結果、相関関係が示された可能性は低いと思う」 それでもUPFで一時的にストレス発散できるから食べるという人もいるだろう。 「実際、UPFはストレス発散のために摂取されがちで、一部はオルダス・ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界』に出てくるソーマと同じではないかと思う。つまり副作用ゼロで強い幸福感をもたらすドラッグだ」とホフマンは言う。 チャンらも論文で自分たちの研究の限界に言及している。「対象は白人女性が中心だった。本人の自己申告のみなので判別ミスの可能性もある」 それでも、加工度の低い食品を選択するのが賢いとは言えそうだ。
ジェス・トムソン(本誌科学担当)